皆様、こんにちは~(^o^)/

今日からGWがスタートしました。

お出掛けされる方も多いのでしょうね。

管理人は前半は特に予定もなく、時間があればSSを書いたり、色々なブログを見て廻ろうかな、なんて思っています。


テレビ東京版「善徳女王」ウリピダムの登場は火曜日からになります。

月曜日は前半のダイジェストが放送されるようです(←がっくしな管理人(笑)

でも見逃したり、今から見る方には朗報です!

管理人も更にチェック入れたいと思います。


拍手コメントへの返信、もう少しお待ち下さいね~m(__)m

では、SS私のピダム 道行き をどうぞ。

最後の方に少し(でもないかも)いやらしい表現が出て来ますのでご注意下さい(*^^*)








木々の緑が萌え、太陽からの日差しが眩しい季節、青々とした草を踏み締めて馬を走らせる男女がいた。

前を走る艶の良い黒い毛並みの馬に騎乗した男が手綱を引いて馬の速度を緩めると、少し後ろを走る栗毛の馬に乗った女に声を掛けた。


「奥方さま」


貴婦人らしい女は笠に薄桃色の垂れ絹をつけている為に何処の誰なのか、傍目からは分からない。

なだらかな坂を登りきった所にある平らかな丘で二人は馬を止めて、眼前に拡がる雄大な山々とその間にある川の流れに添うような平地を眺めた。

太陽からの照り返しで川が輝いて見える。

男は左手にある山の中腹に小さく見える建物を指差しながら

「彼方に見えるのが今晩私たちが宿泊する予定の山荘です。彼処からの日没の眺めを奥方さまにも是非御覧頂きたく…休みを取らずに参りますが…」


女はその言葉を遮るように

「ああっ大丈夫だ。このまま参ろう」

と返事をした。

そうして又二人は馬を連れ立って走らせるのだった。




***

3月ほど前に上将軍ユシンの案により女王の行幸が便殿会議で決定された。

その後、女王の行幸先の下準備の為に司量部令自らが現地に赴き、あらゆる調査をした。

安全が確認されると司量部令は徐羅伐に戻り女王に報告及びその日取り等を検討した。
結果、今日がその出発の日となった。

女王は行幸の総責任者は司量部令ではなく、上将軍ユシンとした。

司量部令ピダムはチュンチュと留守を預かることになっている。

女王は出発の準備を整えると絹の垂れ布を下げた笠を被り、ユシンが迎えに来るのを待っていた。

ユシンが迎えに来ると女王は無言で彼を迎えた。
側に控えているアルチョンが

「陛下はお風邪を召されて声が出ない。この行幸の間は私が陛下のお言葉を代わりに読み上げる。また拝顔も出来ない。拝顔は輿の中でのみ。ユシン公、例外はないとの王命である」


「はっ、王命仰せつかりました」

女王の美しい顔を見られないのは残念であったが、女王の一の臣下として行幸の供に選んで貰った、その事だけでユシンは自分が誇らしく思えた。

女王が輿に乗り込むと一行は行幸に出発した。




***

細い山道に入ってから、馬をゆっくりと進めた二人は西の空に陽が傾き、空に棚引く雲が茜色に染まる前に目的地に着こうとしていた。


「どうやら間に合いそうですね!」

男が「開門せよ」と門の外から命じると門は開けられ、二人は馬寄せ近くまで馬を進めた。

馬を降りた背の高い男は黒に鈍色を合わせた服を着込み、髪を一つに結い上げた美丈夫、司量部令ピダムであり。

そして彼が大分前に「奥方さま」と呼んだ女は神国の女王であった。

二人は此処に来る為に上将軍ユシンを騙し、侍衛部令アルチョンと仁康殿の女王付きの女官を巻き込んで大芝居を打った。

馬を降りた二人は夕陽を眺める為に歩き出した。

遠くから眺めた時は小さな建物に思われたがいざその中に入ると想像以上に立派な建物が幾つもあり、一番大きな建物の長い廊下を進んで行くと最も奥まった所に仁康殿の女王の部屋に模した造りの部屋があった。

さらにその部屋の西側には『月見台』と書かれた広い縁台が設えてあった。


「陛下、夕陽の落ちるのは早く、お召し替えの時間が取れません。今少しそのままでご辛抱下さい」


そう司量部令ピダムが女王に進言した。


「ピダム、この部屋は特別に設えたのか?」


「はい、陛下」


「このまま此処に住めそうだな」


くすりっと笑って女王はピダムのすぐ横を通って縁台の方に歩き出した。

女王は沈み行く太陽の残光を受けながら、茜色に染まる地平線を眺めた。

地上からでは臨めない、その壮大な眺めは女王を虜にした。



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  •   01, 2012 22:54

今回の雨も凄かったですね~

道路が冠水している所があったようですし。

じめじめしているので暑いんだか寒いんだか、とても微妙な感じです。

そして朝ドラ「善徳女王」のウリピダムは今日、明日とお休みです(ToT)



あっ、また忘れる所でした(((・・;)

この間、新大久保を訪れた時に「仁寺洞」と言うお店の2階に「トゥリゲ(金のイヤリング)」のレプリカが飾ってあるのを発見しました!!!

友人たちは韓服を見るのに夢中だったので、解らなかったと思いますが管理人は一人でキャーーーって(心の中で)叫んでおりました(笑)

また見に行きたいなぁと思っています(*^^*)

もし行かれる方がいらっしゃいましたら階段を上がった左側の棚にありますので、ご覧になって見て下さいね♪


では「道行き」の続きをどうぞ。少し短いですm(__)m









日の光が部屋に射し込み、辺りが明るくなっても女王は寝台に横たわったまま、ピダムと野山を馬に乗って駆け回る夢の中にいた。

馬と一体になって、風を切って走れば周りの風景は時が止まったように見える。

ピダムが手を差し出している。

その手にもう少しで届こうとした時に…


「トンマナ…」

何処からか自分を呼ぶ声が聴こえる。

まだ、起きたくはなかったが…あまりに優しい声音で呼ばれた為に、仕方なく眼を開けると…そこには夢の中と同じ黒曜石の瞳があった。


「ピダ…ム…」


「はい、陛下」


「私はまだ夢の中にいるのか?」


その言葉を聞いたピダムは口元を緩めてだらしなく笑いながら


「夢の中でも私と一緒にいたのですか?」


それを聞いた女王はやっと自分がどういう状況にいるのかを理解した。

女王の乱れた髪を手で直しながらピダムは更にこう続けた。

「陛下、とても嬉しいです。それでしたら、今日はこのままずっとこうしていませんか?」


「なっ、ピダム!お前、何を言っているんだ!!!」

と目を見開いている女王の身体を引き寄せて、背中を撫でながら首筋に舌を這わせながらピダムは


「お嫌でしたか?」

と、けろっと言って見せた。


「ピ…ピダム!」

女王はあまりの気恥ずかしさから布団を被って寝台の隅に陣取った。

ピダムはクスクス笑いながら下衣を履き、上衣を引っ掛けると戸の外に用意されていた朝膳を卓の上に運び置き、水差しを取ると茶器に水を注ぎ喉を潤した。

それから髪紐を口で挟みながら己の髪を手で寄せ集めて結んだ。

ざっくりと寄せられた髪が何時ものきっちりと結った髪を見慣れている者には違和感を感じる程に野性味溢れるピダムの姿がそこにあった。

女王は布団の隙間からしっかりピダムの様子を伺っている。

ピダムはピダムで女王がそうしているのを解っていたので、わざと知らないふりをしていた。

女王が下衣を着けて、いざ上衣を羽織って衿を袷ようとほんの少し下を向いた瞬間をピダムは逃さなかった。

素早く女王に近付くと顎を掴み、いきなり口を塞いだ。

女王は思わず「あっ」と小さな声を上げた。

両手で女王の首筋やら背中やらを撫でながら、口付けの角度を少しずつ変えて、舌で口中を撫で回し、そうして女王が蕩ける程の口付けをした後でピダムはもう一度さっきの提案をして見た。


「陛下、今日は一日中、身に何も纏わずに私と閨で過ごしませんか?」

女王の下肢は既に疼きピダムの申し出を断る理由はなかったが…それでは女王としての威厳が損なわれると思った女王は


「朝膳を食べて、一度身支度を整えるなら考えても良い」

と答えた。

ピダムは再びクスクスッと笑いながら女王の朝の身支度を手伝った。

ピダムが女王の髪を櫛梳る手元が鏡に写るのを見ながら、女王はピダムの才能を羨んだ。

顔も身体も頭脳も身のこなしに至るまで抜きん出ているのに、手先の器用さもその身に合わせ持っているなんて…

ピダムの母があのミシルなのだと言うことをこんな時に思い知らされる。

何代もの王に仕え、その王からの寵愛を受けたミシル。

そして己もまたそのピダムを他の誰よりも側に置き、心の拠り所にしている。

もしかしたらミシルを愛した王たちも同じ想いをしたのではないかと思わずにはいられない。

其ほどにピダムと言う男には不思議な魅力があるのだ。

鏡越しに女王がピダムを見ているのが分かるとピダムは女王に満面の笑顔で答えた。


「陛下、何をそんなに熱心に私を見ているのですか?」

女王はまさか自分がミシルのことを考えていたとも言えず、然りとてピダムが羨ましいとも言えず答えに窮した。

ピダムはそんな女王の様子を面白そうに見ている。

女王がどう出るのか、今か今かとその時を待っていた。


「ピダム…此所は宮殿ではない。此処にいる間はお前の無礼な行いも多目に見よう…替わりに此処にいる間はお前は私に常に色を供し続けろ。但し、身体ではなく心にもと言う意味だ。それは忘れるでない」

女王はそう言うと朝膳の用意された卓の前まで進み出てピダムに椅子を引けと目で合図した。

ピダムは想像以上の答えを女王から導き出したことを嬉しく思い、女王の言うがままに椅子を引き、女王が椅子に座ると自らも卓の前に座った。

少し遅めの朝膳を女王とピダムは宮殿では考えられないような打ち解けた雰囲気の中で歓談しながら済ませると、ピダムが女王に


「陛下、折角ですから少し外を歩きませんか?」


「ピダム、今日は一日閨で過ごすのではないのか?」


「はい、陛下。この屋敷の中は私にとっては何処もかしこも閨と呼んで差し支えありませんから」

そう言ったピダムの顔はこの上なく自信に満ちていた。

一日中、室内で過ごすのだと思っていた女王は沓を履いていなかったので、ピダムは箪笥の上に置いてあった女王の沓を手に取ると女王の足元に跪いた。

己の膝に折れそうに細い女王の足を乗せて沓を履かせる。

ピダムの優雅な振る舞いを女王は愛しそうに上から見下ろしている。

そうして沓を履いた足が床に下ろされるとピダムは女王の目の前に手を差し出した。

女王はピダムの手に己の手をそっと乗せた。

ピダムはその手を握って女王を椅子から立ち上がらせると、ゆっくりと女王の手を引いて歩き出した。




Tag:善徳女王二次小説 キム・ナムギル ピダム 赤と黒



GW明け、今日は五月晴れの清々しい一日でしたねー♪

今回の「SS私のピダム 道行き」はトンピの新緑の中でのデートをイメージして書いて見ました。







ピダムと手を繋いで並んで歩く。

それだけで女王の心は弾んだ。

宮殿では決して許されない、二人だけの幸せな時。

月見台のある建物から離れ、女王の額が少し汗ばんだ頃に其処に到着した。

ピダムが木戸を開けると鬱蒼とした木々の間に小川が流れ、手入れの行き届いた苔むした庭が現れた。

ふぁさっと涼やかな風が何処かから流れ込んできて顔を撫でていく、女王は目を閉じて思わず深呼吸をした。


(なんて気持ちが良いのだ!)


「陛下、お気に召しましたか?」


ピダムが穏やかな顔で語りかける。


「ああっ、とても良い庭だな。此処もお前が作ったのか?」


「はい、元々あった庭に少し手を加えただけです」


「元々あった?と言うことは、此所は誰かの屋敷であったと言うことか?」


「左様にございます。元々は貴族の持ち物でした」


「ピダム、それ以上は説明しなくても良い。どうせろくでもないことがあったからお前の持ち物となったのだろうから…」


「御意のままに…」


ピダムは口の端を上げて微かに笑った。


平たい石を組み合わせて作った歩道を歩んでいくと木陰の下に縁台があった。

庭にはそのような縁台が幾つか用意されていて、女王がその場所の景色に飽きると次へと移動して行った。

更に進むと東屋があり、水菓子と飲み物が用意されていた。


「陛下、喉が渇いていませんか?此方で少し休んでから参りましょう」

そう言ってピダムが硝子の杯に入った鮮やかな赤紫色の飲み物を女王に手渡した。

女王はそれを受けとると、それが西方の飲み物「葡萄酒」だと解った。

半分ほど飲んだ所で

「ピダム、これは葡萄酒であろう?色も香りが良いな…何処でこれを手に入れたのだ?」


ピダムはにっこりと微笑みながら

「それは秘密です」


「何、秘密だと!」


「はい、秘密です」


ピダムの意地悪に女王は頬を幾分膨らませながら

「もう良い、聞いた私が愚かだった。此処にいる間はお前のすることに口を挟むのは止める。そしてお前の考えた趣向を楽しむことにしよう。さあ、ピダム、次は何で私を驚かせてくれるのか?」


「そうですね、もう少し此所で時を過ごしてから…この屋敷は時の移ろいと共に過ごす場所を変えると面白いものに出会えるように造られているのです」


棗の砂糖漬けが盛ってある器を女王の前に置きながら

「陛下、棗の砂糖漬けです。甘くて美味しいですから、どうぞ沢山召し上がって下さい」


ニコニコしながらピダムがそう言うので、不思議に思った女王は

「ピダム、私がこれを食べるとお前は何か良いことがあるのか?」


「はい、陛下。棗は滋養にも良く、食べるとその…」


「その、何だ、ピダム?」


「はい。つまり身体がふっくらするのだそうです」


「ピダム、お前…」


女王は笑いだした。ピダムも釣られて笑いだす。

そんな他愛ない会話をしながら二人は暫くの間木漏れ日の差し込む庭先で楽しい一時を過ごした。




**

時は過ぎ…日が中天より少し落ちた頃にピダムは女王と共に庭に隣接した建物へと足を踏み入れた。

其処には宮殿の書庫と同じ位の蔵書が並び、隣の部屋には何輻かの絵が架けられていた。

女王は驚きながらも蔵書の一つを手に取ると文字を追い始めた。

ピダムは女王が読書に没頭してしまう前にと、声を掛けた。


「陛下? 陛下…」


「ああっ、ピダム、何だ?」


「陛下が何よりも読書がお好きなのは存じております」


ピダムはにっこりと笑いながら

「私は暫くの間、陛下のお側を離れますので、どうぞ日が西の空に傾くまで此方でお好きにお過ごし下さいますように」


女王は少し戸惑った顔をした。

「だがピダム、朝方お前は一日中、閨で過ごしたいと申したのに…本当にそうして良いのか?」


「はい、陛下。いえ、陛下。ピダムの本心は陛下とずっと閨で過ごしたいと言っておりますが…実際のところ、行幸や宮殿の様子も気になりますので…」

そう答えたピダムはいつもの司量部令の顔をしていた。


「そうであったな。私は此処に居てはならぬのだから。全てお前の良いように…」

女王は頷きながらそう言った。


「では陛下、失礼致します。何かありましたら、そちらにある鐘を鳴らして下さい」


「ああっ、解った」

ピダムが戸口で最後に自分に柔らかな眼差しを送ってから退出するのを見送った女王は、幾重にも並ぶ蔵書の棚を端から端まで見て回ることにした。

新羅の本は元より、ローマや西方から伝わったらしい本や百済・高句麗・唐…更には伽耶の本もあり、女王は自分が思っていた以上の強大な権力をピダムが握っていることに少し戦いた。

ピダムがもし自分を王の座から引き摺り落とそうと試みるなら、それは十分に可能なことかもしれない。

王は常に周りを警戒して生きねばならない。

本来、王たる者は孤高の道を一人で歩まなければならない。

そんなことは十分承知している、そう思っていたが…

いつの間にかピダムが心に入り込んで、今ではピダムがいなければ生きられないほどにピダムを必要としている。

だからもしピダムに王座を奪われるなら、その時は愛も命も同時に終わると言うことだ。

それならそれで良いではないか。

ピダムを信じ、ピダムを愛して生きる。

そう決めたのだから…

女王は背表紙にローマ語で「愛について」と書いてある本を手に取って頁を捲った。

古今東西、愛に悩む気持ちは同じなのだと思うと心が軽くなったように思えた。

そうして心の赴くままに、女王は読書を楽しみ…


窓からは刻一刻と西の彼方に沈み行く太陽が作り出す茜色の残光が射し始めた。

ピダムが姿を現すまで今少し。









☆続きます。

最後までお読み下さり、ありがとうございました(^з^)-☆

道行きはトンピの蜜月旅行なので、まだまだ盛り沢山に描きたい管理人です(笑)

欲張りすぎて話が纏まらなくなったら(((^_^;)

いえ、なんとかします!なんとかなるでしょう!!

何事も前向きに、陛下を見習って♪(ご褒美はピダムのハグで(爆)











今日は一日中、風の強い日でした!

このブログのタイトルにもなっている『風』

風にも色々な声があって、今日の風はやや怒り気味の風だったかもしれません。

チョンミョン王女が亡くなり、哀しみを怒りに変えたトンマンの声だったかも…

今日のテレビ東京版「善徳女王」は第27話『私の王』でした。

最初のナレーションも変わって、いよいよトンマンが女王への道を歩み出しました。

中々良く出来た吹替え版だなぁって思って見ています(^o^)/


前置きはこの辺にして「道行き」の続きをどうぞ。







ピダムは放っていた司量部の密偵から行幸と宮殿の様子を一通り聞くと、侍衛部令アルチョン宛の手紙を手渡した。

そこには行幸の一行が最後に立ち寄る寺での女王の入れ替えの手筈が詳細に書き記してあった。

女王と影が入れ替わることによってピダム自身の不在も誰にも疑われることなく(特にチュンチュには)全てが上手く行くのだ。

既に徐羅伐にピダムがいないことはチュンチュから女王(影)やユシンに伝わっている筈だろうから…

それを逆手に取って 「ピダムは女王の元ではなく他の誰か(女)の元に向かった。しかも女王の不在時に」とでもチュンチュから女王に密告させるのが目的なのだ。

そうさせてこそ、誰にも疑われずにこの女王の入れ替え劇が成就する。

事が成就した後に、自分が女王に大目玉を食らえばそれが成功の証となる。

ピダムは苦笑しながら

「損な役回りだな」

とポツリと言った。




**

女王を喜ばせる為に…ピダムは少し前から密かに練習して来たことがあった。

器用なピダムであっても名人の域に達するには幾分時間がかかることだった。

琵琶語り。

新羅の楽器の「三弦」「三竹」の中でピダムは月琴と呼ばれる琵琶を選んだ。




(左側が月琴、右側が唐の月琴)




いつか女王が「お前の声が好きだ」と言ったのを思い出し、それなら声も活かせる楽器を、と自然と月琴を選んでいた。

折しも今日は天気も良く、あの壮大な夕焼けを眺めることが出来る筈だ。

沈み行く夕日と共に月琴の調を奏でようとピダムは久しぶりに月琴の置いている部屋に足を運んだ。

月琴を手に取ると弦の調整をし、大きな音を出さないようにしながら、軽く摘ま弾いた。

そして吟い始めた。



紅色は恋の色

その身を焦がす乙女の色

赤玉 石榴 石榴石

焔 夕焼け 彼岸花

恋しい貴方を想うだけで

心に点る恋の色

その身を焦がす乙女の色



「私には不似合いな詩だが…」

ピダムはそう言いながらも、これを聴いた時の女王の喜ぶ顔が見たかった。

もっと切ない曲を選んで女王の眸から泪を溢れさせるのも良いかもしれない。

しかしそれよりも女王の微笑む顔が見たかった。




***

女王が時を忘れて読書に勤しんでいる処に侍女らしい女が声を掛けて来た。


「あの、陛下…」


「何だ?」


「湯あみの支度が出来ております。どうぞお入り下さいますようにと、ピダム様から仰せつかりました」


「そうか。解った。暫しそこで待て」

女王はそう言うと読んでいた本の間に栞を忍ばせ本を閉じた。

侍女の案内で湯殿に着いた女王は

「後は自分でやるから、そなたは下がって良い」

と命じた。侍女は


「はい、陛下。お上がりになる頃お伺い致します」

と答えて湯殿の外に出ていった。

開け放たれた窓からは棚引く雲が夕日に照らせれ茜色に染まっているのが見える。

久しぶりに思う存分手足を伸ばして湯に浸かった女王は夕焼けを見ながら自由とは何と素晴らしいことなのか、と思わずには居られなかった。

侍女らにかしずかれて生活することに慣れはしたものの、育ちは普通の庶民と同じ女王は一人きりの時間を十二分に楽しんだ。

どれ程の時間が過ぎたのか、何処からか歌声が聴こえて来るのに気が付いた。

勿論、誰が吟っているのかも直ぐに解った。

やはり良い声をしている。

この声音で囁くように吟じられたら、女なら夢見心地になってしまうのは仕方ないと思う。

私も女だと言うことか…

そんなことを考えていると歌声はどんどんと近付いて来て、おまけに月琴の音も聴こえて来た。

砂漠で良く聴いた吟遊詩人が語る調にも似たその詩は恋歌だ。



紅色は恋の色

その身を焦がす乙女の色

赤玉 石榴 石榴石

焔 夕焼け 彼岸花

恋しい貴方を想うだけで

心に点る恋の色

その身を焦がす乙女の色



真っ赤に染まる夕焼けと吟われる恋の歌が重なって、女王の胸に欲情の焔が灯り始める。

暫くの間、湯槽の端に両の手を置いて其処に頭を乗せて寝そべるように湯に浸かりながら、ピダムが吟い奏でる歌に女王は耳を傾けた。

日は既に地平線に沈み、微かな残光を残しながら闇が空を支配する。

一番星、二番星とちらほらと星が姿を現し始めた。

ピダムの吟う声が月琴の音と重なるように低く高く、また低く辺りに染み入るように聴こえている。

女王のいる湯殿の周りもすっかり闇に包まれると女王は湯から上がり、何も纏わずに湯殿の戸を開こうとしていた。

湯殿に着替えが無く、侍女を呼べばピダムの吟う歌が途切れてしまう。

そう考えた時、女王は大胆な決断をした。

(やはり褒美は一糸纏わぬ私と言うことか?ピダム…お前は本当に策士だな。だが、その月琴の音を聴けばお前の気持ちは良く解る。ありがとう、ピダム。夜の帳も落ちた。私もお前の気持ちに答えねばな…)


戸を開けて外に出ると女王はピダムに向かって声を掛けた。


「ピダム、美しい歌だな」

眩いばかりの肢体を目にしたピダムは一瞬声を失い、月琴を摘ま弾く指が止まった。


「陛下…」

まさか、女王が裸のままで目の前に現れると思っていなかったピダムはネジの止まったからくり人形のように動きを止めた。

女王はピダムに近付きながら


「ピダム、どうした?吟ってはくれないのか?お前の吟う声が私は大好きなのに」

ほんの少し手を伸ばせば届く所にこの世で最も欲する女王がいる。

だが、いざとなるとピダムと言う男は純粋故に何も出来ずにいた。


「ピダム?」

女王は自らピダムに近付き水の滴る両の手をピダムの首に回し、唇を合わせようとピダムの眸を見詰めた。

そうして女王の唇がピダムの唇に触れるとピダムは息を吹き返したように動き出した。








最近の天候は本当に不安定ですよね~

昨日は雨が降って涼しかったですが、今日は打って変わって夏日になりそうです。

皆様、風邪を召されないようにお体ご自愛下さいm(__)m

今晩は道行きの続きをお送りします。

パスワードを掛ける内容ですので…宜しかったらお読みになって下さい(^.^)





狂おしいまでに愛しい女王の艶かしい姿を見てしまったピダムは、その場で女王を抱き潰してしまいたい衝動に駆られた。

だが、その一方で女王への溢れる愛情がピダムの思考に冷静さを与えた。

ピダムは己の上衣をさっと脱ぐとまだ水が滴り落ちる女王の身体に掛け、そっと女王を抱き締めて


「陛下、風邪をひいてしまいます」

そう言ったピダムの声が幾分震えているのに女王は気付くと


「お前こそ大丈夫なのか?声が震えているぞ!」

ピダムは苦笑しながら


「陛下、寒くて震えているのではありません。我慢しているのです」


「…我慢だと?」


「はい、我慢です」

女王はピダムの頬に手を充て、ゆらゆらと揺れる黒い眸を見詰めながら


「ピダム…明日になれば私はまた神国の女王として、神国に住む全ての民に愛を与えねばならない。だが…だから、今宵だけはお前一人に、お前だけに私の愛を与えたいのだ。我慢はしなくて良い。お前の思うままに…ピダム…」


「陛下…」

まだ心を決めかねて躊躇しているピダムに


「夜が明けるまではトンマンと…そう呼んで欲しい」

そう言ってピダムの胸に飛び込むようにその身を預け、久方ぶりにその言葉を口にした。


「ピダム…お前を愛している」


「陛下…」


「ピダム…」


二人そうして暫くの間見詰め合い…

どちらともなく顔を寄せると唇を合わせた。

今宵限りの情愛を込めた口付けは時間が経つ程に深まり、女王は時々やっと出来る呼吸に息が足りずに頬を紅く染めた。


「ンっ、ピダム…」

ピダムはやっと女王の呼吸が足りていないことに気付いた。

唇をそっと離すと女王の頬から首筋に舌を這わせた。

女王に掛けた上衣を床に敷くと、そこに女王をそっと寝かせ、己の下衣を脱ぐと女王に覆い被さり


「トンマナ…」

その名を呼んだ。

その名を口に出すことは禁じられている。
王の名はこの世の誰にも呼ぶことが出来ない神聖不可侵な物なのだ。
それを口に出来る悦びは至上の幸福だとピダムは思った。


女王はピダムにその名を呼ばれることにときめいた。
即位してから誰にも呼ばれることの無かった、その名トンマン。

愛する男の腕の中でこれ以上の幸福はないと言う程に身も心も愛されて、自身の中の女が久しぶりに花開いたのを感じた。

その淫らで美しく咲いた花にピダムはさながら蝶のように蜜を求めて唇を寄せた。


「あっ、ピダム…」

女王の可愛らしい矯声が上がる。

ピダムは花弁一枚一枚に丁寧に舌を這わせ、その雌しべに指を入れては優しく壁を刺激した。

透明な蜜が溢れんばかりに雌しべの入口から流れだし…

ピダムはそれを唇で吸いながら舌を雌しべの中に差し入れた。


「うっ、あっ…ピ、ダム…」

女王はピダムから逃げるように腰を引いた。


「トンマナ…」

ピダムがこの上なく優しく狂おしく、その名を呼ぶ。

女王はその声に絡めとられるように脚を開き、再びピダムの愛撫を受け入れた。

より濃厚で執拗な愛撫を舌と指を使って女王の濡れた花弁に与えつつ、もう片方の手は形の良い胸の先端部を摘まみ、花弁の奥の壁がぴくぴくと動く様を確認するとピダムは己の男を握って女王の蜜壺に宛がった。

蜜と蜜を絡めて入口を優しく拡げると少しずつそれを侵入させて行く。

女王の蜜壺は待ち望んでいたものの侵入に内膜が波打ち、身体じゅうが痺れた。


「んっ、ピ、ダム…」


「トンマナ…」


「気持ち良すぎて…溶けそう…」

女王の目から泪が流れ落ちる。

ピダムはそれを舐め取ると一息に腰を沈め、ゆっくりと動かし始めた。

女王は微かな矯声を上げてピダムにしがみつく。

「あっ、んっ、やっ…」

ピダムはその可愛らしい声をもっと聞こうと、腰を女王の肌に密着させて蜜壺をかき混ぜるようにうごかした。

ピダムの息遣いが少しずつ荒くなり、蜜の絡み合う水音がクチュクチュと響く。

女王の下肢は痺れ、乳白色の肌は薄い桃色に染まっていく。

ピダムは腰を動かしながら女王の呼吸を奪うような口付けをし続けている。

女王は女王という鎧を脱がされ、トンマンとして女として、ピダムに全てを委ねた。



そうして何度目かの絶頂を迎えた時、頭上の星は消えて東の空がうっすらと明るくなっているのが見えた女王はピダムに問い掛けた。

「ピダム…そろそろ時間では…」


ピダムの情欲はまだ満たされてはいなかった。

「まだ日は地平線から顔を上げておりません」


そう言うと女王の脚を掴み、女王に絶頂の余韻も与えずに激しく楔を打ち込んだ。

女王の身体は荒波の中の小舟のようにピダムに揺らされ続けた。



☆続きます。

最後までお読み下さり、ありがとうございましたm(__)m

道行きは後2話で完結する予定でおります。



皆様、こんばんは(^o^)/
管理人、金曜日の夕方から夜って一週間で一番心がウキウキする時間です♪
しかも今日のようにしとしと、と雨が降っていたりするとより心が落ち着きます。
乾いた心に水が染み込むような…そんな感じがするからでしょうか?
今晩は「道行き」の続きをお送りします。









「陛下…陛下…」

女王はピダムの声に促されて目を明けた。
ぼやけていた意識が段々と鮮明になって来ると己が寝台の上に寝ていることに気が付いた。


「陛下…大丈夫ですか?」

ピダムが心配そうに見詰めている。


「んっ、心配するな。ピダム…」


そう言いながらも身体中がだるくて中々起き上がれないでいた。

(ああっ、そうであった。昨晩はピダムと…。出来ることなら、あのままずっと誰にも邪魔をされずにピダムと二人生きていけたら、そう星に願わずにはいられなかった。だが、今は…)


女王はピダムを見詰めながら


「ピダム…ここを何時出立すれば良いのだ?」


「はい、陛下。明日の朝、日が昇る前に彼方に到着すれば良いので。昼頃出発すれば充分でございます」


女王は安心した顔で


「ああっ、解った、ピダム。今暫しこのまま居させてくれ」

ピダムは女王の髪を撫でながら囁くように


「陛下…このまま、私と遠くへ行って暮らして見ませんか?」


「ピダム…」

女王は自分の心の内を言い当てられたかと思い、少し驚いた顔をした。
ピダムはそれを目にしながらも自分の想いを女王に囁き続けた。


「元々、陛下も私も野で育った者。何処へ行こうと何をしようと生きて行けます。私と一緒に何処か遠くの土地で…太陽と共に寝起きし、土を耕し…毎日仲睦まじく…そして、二人の子を育てて…」


「ピダム…そう出来るなら、そうして見ようか…」


女王は遠い目をしながらピダムに身体を寄せた。そんな女王をピダムはそっと抱き締めて


「陛下が心からそう思われる時が訪れたなら、その時は必ず…」


「ピダム…」


それきり二人とも何も言わずに、互いの温もりだけを感じて、後朝の名残を惜しんだ。





***

出立の準備も整った昼過ぎに厩まで手を繋ぎながら歩く途中、小さな菫の花を見つけたピダムは女王に声を掛けた。


「陛下、こんなところに菫の花が…」

それを摘もうと屈んだ所を、女王に止められた。


「ピダム、そのままにしておこう。野に咲く花は野にあってこそ美しいのだから」

(だから私も私の居るべき所に戻る。戻らねばならぬ。ピダム、お前と共に…)


繋いだ手を離し、馬に乗ろうとした二人だったが女王の体調を気遣ったピダムが言った。


「陛下、私の馬に一緒に乗って行きますか?」


女王は初め、その申し出を断ろうとしたが先を考えればその方が支障をきたさないであろうと判断し、ピダムの馬に同乗することを選んだ。

女王の返事を受けたピダムは今少しだけ女王の温もりを感じながら過ごせる、そう思うと顔が独りでに綻んだ。


「ピダム、嬉しそうだな?」


「陛下は嬉しくないのですか?」


「お前は素直だな。私は嬉しくもあり、寂しくもあり、どちらとも言えない」


「何故ですか?」


「今日一日お前と共に居られることは嬉しいのだが、今日でそれが終わることを考えると…寂しくもあるのだ」


「陛下…」

ピダムは女王を抱き上げて馬に乗せると自らも馬に股がり、馬を進めた。


「陛下、では傘の薄絹を下ろして下さい。それと来た道と同様に私は陛下のことを奥方さまとお呼び致します」

そうして二人は門をくぐり抜けて、来た道を戻って行った。



鬱蒼とした森を抜け山を下りるとなだらかな丘がずっと続く一本道に出た。

草木が風に吹かれてさらさらと音を立てる中、ピダムは馬を走らせる。

青い空と大地の間には二人の姿があるのみで、見渡す限り、そこにあるのは山と川と野原と…

遠くの方で鳶が鳴く声が微かに聴こえた。



女王はピダムの背に身を寄せ腕をピダムの腰の辺りに回している。

被っている傘が邪魔をしてピダムの鼓動を耳を寄せて直に聞けないのが残念に思われたが、それでも回した腕からトクトクとピダムに流れる血潮の音と温かさが伝わり、女王はそれだけで幸せな気持ちになれた。


(ピダム…このままずっと…お前の鼓動を感じていけたら…)


ピダムの腰に廻した腕に力が入るのを女王は気付かなかった。

小一時間ほど馬を走らせると泉の涌き出る木陰が見えた。
ピダムは馬の速度を落とし始める。

二人ゆらゆらと馬に揺られながら


「奥方さま、少しお休みになられますか?」


「いや、大丈夫だ」


女王は少しだけ無理をして、そう言葉を発した。


「奥方さまが宜しくても私が少し休みたいのです」


不思議に思った女王はこう投げ掛けた。
 
「お前なら一日休まなくとも大丈夫ではないのか?」


ピダムもそう言われることは予想していたのか…

「はい、それはそうですが…其処にある泉から涌き出る水を奥方さまに飲んで頂きたくて…それに…」


「それに何だ?」


「それに…降りてからお話します」


ピダムは馬を止めると馬から飛び降りた。
次いで女王を馬から下ろして、馬を木につなぎ止めると女王の元に戻って来た。
そして切ない表情をしながら


「それにこうしたくて我慢が…」


ピダムは女王を引き寄せ、抱き締めると垂れ絹を上げて息を奪うような口付けを始めた。


「んっ、ピダム…」


驚いた女王は咄嗟にピダムの胸を手で強く押してピダムの腕から逃れようとしたが所詮女の力では無理だった。

女王が己の腕から逃れようとしていることを察したピダムは長い時間をかけて女王の眸がピダムだけを写すまで執拗で濃厚な口付けをし続けた。

「んっ、あっ、ピダム…」


女王が自分を受け入れ始めたことを確信したピダムは木陰に女王を誘い、敷物を敷くと其処に女王を寝かせた。
その先に進もうとピダムは再び女王に覆い被さった。


「奥方さま…」


艶のある声は幾分掠れていた。








☆続きます。



皆様、こんばんは(^o^)/
昨日から始まった六本木のナムギル祭り、盛り上がっているようですね~
あちこちのブログにアップされてました!
管理人も今週火曜日か木曜日辺りに出没したいと目論んでおります(笑)

今夜は少し早めに「道行き」の完結編をアップしました。
いやー連載って難しいですね(((^_^;)
多目にみてやって下さいm(__)m

そして今、ちょっとおどろおどろしいお話を構想中です(←暑くなったから、やっぱり背筋が凍るようなやつも…なんて)
構想ばかりで土台はやく建てなさい!って感じですけどねー(/--)/

それでは「道行き」完結編、宜しかったらお読みになってみて下さい。







「あっ、ピダム…」

甘やかで燃え盛る焔のようなピダムが己の心と身体を包みこんで、あっという間に通り過ぎて行った。



女王はその余韻に浸りながら、衣の袷を合わせ、少しだけ乱れた髪を撫で付け、そっと後ろを振り返った。

ピダムが泉の横で馬に水を飲ませているのが見えた。


(ピダム…きっと私が怒っていると思っているのだろう。女王たる私をこんな所で抱いてしまったことを後悔しているのだろう。お前はそういう男だ。あんなに激しく私を求めながら、触れる唇の何と柔らかいこと。耳元で囁く声が小波のようで…私はいつもピダムと言う大きな湖に漂う浮き草のように身を任せてしまうのだ)


女王は立ち上がってピダムの元に歩み寄りながらピダムに声を掛けた。


「ピダム…」

ピダムはゆっくり振り向くと強ばった笑顔で


「奥方さま。お支度はお済みになりましたか?」

そう言った。
女王はピダムにそっと近付いて強ばった頬に手を添えた。


「ピダム、如何した?折角の美しい顔が憂いを含んでいるぞ」


「奥方さま、お許し下さい。こんな所で私は奥方さまを…」

女王はピダムの真っ黒な眸を見詰めたながら


「ピダム、私は今は只の貴族の女主人でしかない。それにお前が思っている以上に…私もお前とずっとああしていたいと思っていたのかもしれない」


「奥方さま…」


「ピダム…」


二人の眸と眸が絡み合った瞬間、風が二人の仲を邪魔するかのようにざーっと吹き抜けて行った。


『天命を全うせよ』


そう風が言ったような気がした。

二人我に帰り、再び馬上の人となる。

一気に馬の速度を上げたピダムは前だけを見て馬を疾走させた。




***

既に日は西に傾き辺りは薄暗くなっている。


「奥方さま、あの山を越えた向こうに目指す寺がございます」

ピダムがそう後ろにいる女王に話しかけると女王は


「そうか…」

とだけ答えた。そして心の中で


(もう少しで、お前との時間は終わってしまうのだな…)

と呟い。




寺から少し離れた待ち合わせの場所で二人が待っていると暗がりから二つの影が現れ出でた。

侍衛部令アルチョンに伴われた女王の影(イオエ)だった。

アルチョンが女王に嬉しそうな顔で挨拶をした。


「陛下、ご無事で何よりでした」


「侍衛部令、心配をかけました。それから、イオエにも…」


「陛下、滅相もございません。こうして無事にお姿を拝見して私の胸の支えも降りました。後は司量部令に任せて我々は戻りましょう」


早早、アルチョンは女王に帰還の意を促した。
女王はピダムの方を一度だけ振り替えり、ピダムに感謝の眼差しを送った。


(ピダム…ありがとう。楽しかったぞ)


残されたピダムはイオエと共に小さくなっていく二つの影を見送りながら、女王との幸せな想い出を一つ一つ反芻して行った。


(陛下…愛する私のトンマナ。また何時の日か、貴女と二人、あの場所から沈み行く夕日を見られるように私は努力致します。宮殿にいては望めない自由を貴女に贈る為にも。一層の努力を致しましょう)


暫くの間、闇に紛れて立っていたピダムだったが…
イオエを馬に乗せると徐羅伐へ向けて馬を走らせた。




***

翌日、徐羅伐に戻った女王は午後遅くに便殿会議を招集した。
その場でこの度の行幸の功労者である上将軍ユシンに銀五十貫と絹百反を褒美として取らせた。
ユシンは誇らし気にそれを受けとり、笑みを絶やさなかった。

そして司量部令の職務放棄の件には一切触れずに会議を終えるといつも通りに女官を引き連れ、仁康殿に足を向けた。

すると戻る女王をチュンチュが追いかけて来た。


「陛下ー!陛下、お待ちになって下さい」


「チュンチュ、どうした?」


そう言って女王がチュンチュの顔を覗き込むと


「陛下、私がお送りした書状はお読みになられましたか?」


チュンチュは少し怒っているようにも見えた。
それには構わずに女王はさらりと答えた。



「ああっ、読んだが…それが如何したのだ?」


「宜しいのですか?司量部令は職務を放棄して何処ぞで誰かと会っていたのですよ」


尚も詰め寄るチュンチュに対して


「チュンチュ、司量部令からは病欠の書状が届いている。そしてあの手紙の話が本当だとしても司量部令は妻帯者ではない、何処ぞで誰かと会っていたとしても処分する理由にならないではないか!」


「しかし、陛下…」


「チュンチュ、どうだ、これから一緒に夕膳を食べないか?」


チュンチュは女王の返答は気に入りなかったが、満面の笑みを湛えた女王の誘いは断れなかった。


「はい、陛下。喜んで」


そうしてチュンチュを伴って仁康殿へと帰った女王は、その夜遅くまでチュンチュと共に夕膳を囲み楽しい時を過ごしたのだった。



**

女王が夜着に着替えることが出来たのは、その日が終わろうとしている頃だった。

旅から帰ってからも一時も休まずに過ごした女王は流石に瞼が重たくなって寝台に横になるなり眠りに落ちた。

夢の中で女王はピダムと過ごした楽しい思い出の中にいた。


「ピダム…」

思わずその名が口から零れ出た。


ピダムは少し前に馴染みの女官の手引きで女王の寝室に入った。

そして入るなり、その寝言を耳にした。

ピダムは愛しそうに女王を見詰めながら寝台の端に腰掛けた。


「陛下…ピダムは此所におります」

その声が届いたのか、女王はうっすらと目を開け、ピダムの姿を見つけると手を伸ばした。


「ピダム…居たのか…こっちへ来い」


ピダムは女王に寄り添うように寝台に横になると女王の髪や頬を撫でながら優しい口付けをあちこちに落とし…
女王を幼子のようにあやして、再び夢へと導いた。

そして自身も女王を守るようにその横で眠りに着くのだった。




現実での旅は終わりを告げた。

しかし、二人の道行きは夜毎夢の中で繰り返される。

永遠に別れることのない長い一本道を手を繋いで歩いていく。

二人だけが分かち合う愛の逃避行。

現世とは裏腹の…夢…幻なれど。













皆様、こんばんは(^o^)/
管理人、本日は六本木のナムギル祭りに参加して参りました!
管理人たちが到着すると既に並んでいる方が…その方たちとも直ぐに打ち解け、ナムギル話で盛り上がり、あっという間に映画の上映時間となりました!!(←皆、ナムギルへの熱い想いでいっぱい)
「後悔なんてしない」感想は後程にして…
今夜はリクエストがあった「道行き」のおまけを書いて見ました。
エロではありませんが…少しだけ危ない表現が入ってますので、ご注意下さいねー♪
では、よろしかったらお読みになって下さいm(__)m







淡い光に包まれた静寂の世界に生まれたままの姿で二人漂いながら…

女王はピダムに話かけた。


「なぁ、ピダム…」


「はい、陛下…」


「ここは何処なのだ?」


「さあ、私にも解りません」


「お前と私の他には誰もいないし、何もない」


「陛下…良いではありませんか!二人きりなら何だって出来ますから」


そう言ったピダムの顔は見たこともないような清々しい表情を湛えていた。


「うん、ピダム…何だって出来そうだな!」


「何をいたしましょうか?」


「ピダム…お前は何をしたい?」


「私ですか?私は陛下をいっぱい感じたい。そう思っています」


「私を感じる?それはどういうことなんだ?」


ピダムは女王に近付くと顔を寄せて、女王の額に自分の額をくっつけて…


「たまにはこんな風に互いを間近で感じるのは、どうですか?陛下…」


「どうです?と言われても…ピダム、恥ずかしくないのか?」


ピダムは驚いて


「恥ずかしい、のですか?」


「ああっ…少しばかり…」


「では、これならどうですか?」


そう言うとピダムは女王の唇に自分の唇をそっと置こうとして…


「あっ、ピダム…」


「まだ、何もしていませんよ!」


そう言ったピダムの深淵の色をした眸がキラキラと輝いていて…

そのまま心を吸い込まれそうになった女王は…


「お前の眸の中に星が見えたぞ!」


「本当ですか?、陛下…」


「ほら、天の川のように沢山輝いて見えるぞ」


「…」


ピダムは女王の手をそっと握りながら


「陛下…そんなに覗きこまないで下さい。さもないと…」


握った手をぐいっとひっぱって女王を胸の中に閉じ込めると、ピダムは今度こそ女王に口付けの嵐を降らせた。


「…ピ、ダ、ムっ…んっ…」


お前の唇は柔らかくて…温かくて…

お前の舌使いは優しくて…そっと舌を絡ませると甘美な蜜の味がする。

その甘露を舐めとりながら…

淫らなほどにお前の全てを感じる時…

私はお前と一つになったような気がする。

ピダム…お前が愛しくて…

泪が涌き出るほどに幸せで…






**

目が覚めると雨がしとしと音を立てながら降っていた。

今朝は肌寒さを感じるくらいに空気が冷えていて…

隣で眠るピダムがいなければ寒さに震えていただろう。

いつの間に隣に寝ていたのだろうか?

昨晩はチュンチュと夕膳を共にして…

それから着替えて横になってからの記憶が全くない。

夢の中でピダムが私を呼んだような…

あれは夢ではなかったのか?

ピダム…お前も疲れていただろうに…

「来てくれて、ありがとう」

女王はピダムに小さな小さな声で囁いた。

そうして暫くの間、女王はピダムの安らかな寝顔を見ながら一人雨の音を聴いていた。



ピダム…

お前が目覚めたら何をしようか?





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