FC2ブログ

SSS私のピダム 春の嵐 

2012, 04. 07 (Sat) 09:08

昨日も午後から春の嵐が吹き荒れました。

3分咲き位の桜が風に煽られてましたね~

まだ咲き始めたばかりですから散ることはないと思いますが…

この週末はお天気が良いことを祈りたいです。

今日のお話はこの前の台風並みの嵐で電車が止まり、その待ち合いの時間を利用して

書き始めたものです。本当に凄かったですよね(((・・;)

短いですm(__)m










春の嵐が吹き荒れる晩、女王は風の音で目が覚めた。

隣で眠るピダムはすやすやと寝息を立ててぐっすり眠っていた。

女王はピダムにそっと寄り添うと胸に耳を充てて鼓動を聞いた。

ドクンドクンと力強く波打つ鼓動。

ピダムの、昔と変わらぬ規則正しく心の臓が刻む音を聞く内に又眠りへと落ちていった。





***

「ピダム、胸の音が速くなったぞ!」


「そりゃそうですよ」


「何故だ?」


トンマンは華奢なトゥリゲが下がった耳をピダムの胸にぴたりと寄せて鼓動を聞いていた。


「何故って…じゃあ公主様こっちを向いて貰えますか?」


「こうか?」


「目を瞑って頂けませんか?」


「ああっ」


ピダムはトンマンの顎を引くと自分の唇をトンマンの唇に充てた。


「なっ何をする!ピダム!」


「何って…これが口付けと言って男と女が睦合う前に交わすものです」


ピダムはトンマンの手首を掴んで脈をとった。


「ほら、公主様の鼓動も早くなりました。詰まりですね、さっき公主様が俺に近づいたから…ここがドクンドクンとなって…」


胸をトントンとしながら熱く潤んだ目でピダムはトンマンを見詰めた。

そしてトンマンに近づくと再びその唇に唇を充てた。


(これが、これが口付けなのか…)


トンマンはピダムを見るだけで胸がドキドキし始めた。

しかも明晩からトンマンは公主として色供を受けることになっていた。

男女の睦事には全くもって関心のないトンマンであったが…

口付けの、その生々しさを知ると男と身体を重ねるのがおぞましく思えて来た。


(嫌だ。好きでもない男と身体を重ねるなんて)


そう思うと涙が込み上げて来た。

それを見たピダムは


「公主様。何故お泣きになるんです?俺との口付けお嫌でしたか?」


「そうではないのだ。明日のことを…明晩のことを考えたら、何だか嫌な気持ちになった」


吐き捨てるように呟いた。

そしてピダムの真っ黒な瞳を見詰めながら


「ピダム…私はお前と、初めての男はお前であって欲しいと。ずっとそう思って来た。だから…」


そう言ってピダムの胸にふわりっと顔を埋めた。

そんなトンマンをピダムはぎゅっと抱き締めた。


「トンマ..ン…」


限りなく優しい声音でピダムがトンマンの名を呼ぶ。

口付けが熱を帯びたものに変わり…

二人の息遣いが荒くなって行った。

そうしてその日ピダムとトンマンは初めて身体を重ね、互いの想いを確かめ合った。



**

長い間、睦合った後、二人は横になって微睡んでいた。

トンマンはピダムの汗ばんだ胸に耳を充てた。


「お前の鼓動を聞くと何故か分からぬがとても落ち着く。それに何だかとても眠い…」


「トンマン…」


ピダムの腕の中は幸せで…





それからと言うもの女王は眠れぬ夜はピダムの胸に耳を充てる。

それはまるで子守唄のようにトクトクトクと…

揺りかごで揺らされる赤子のようにスヤスヤと…

女王を夢の世界に導く。


外の嵐も何処吹く風の如く。


ピダムの胸の中は幸せで…







スポンサーサイト

SSS私のピダム 春の宵 

2012, 04. 14 (Sat) 00:00


昼間は春らしい陽気でしたのに、お天気崩れてしまいましたね。

でも雨は雨で風情があるのでそんな晩もお酒を少し飲んでほろ酔いになるとそれはそれで又楽し♪

週末はついつい夜更かししてしまいます。

昨日一昨日とパスワード限定SSでしたので、今晩はパスワード無しにしたいと思って…

こんなお話になりました。少し短いです。










「ピダム…」


「はい、陛下」

内苑を司量部令ピダムを伴ってそぞろ歩いていた女王が少し後ろを歩くピダムに声を掛けた。


「美しいなぁ…」


桜の花弁が風に乗って舞散る姿に女王は痛く感動して足を止めた。

風に舞う花弁を手で掴むような仕草を時折しながら、微笑んでいる。

ピダムも共に足を止め、桜吹雪の中で女王の姿だけを追っている。

(美しいのは陛下、貴女です)


そんなピダムの様子に気が付いた女王は


「お前がそんなに熱心に桜を愛でるなんて…知らなかったぞ!」

ピダムも優しい笑顔で答える。


「はい、陛下」

(いえ、陛下。そうではありません。私が見ているのは桜ではなく、貴女唯お一人!)


そんな二人のちぐはぐな想いを他所に桜は風に舞い、将に春爛漫。

内苑には様々な種類の花が植えられている。

桜も垂れ桜はまだ8分咲きで桃色がかったその風情は薄紅色の物とは違い、可憐で美しかった。

連翹や雪柳、水仙も色とりどりに咲き誇り、女王の目を楽しませている。


「ピダム、覚えているか?昔まだ公主だった頃にお前が良く連れて行ってくれたあの菜の花畑を…」


「はい、陛下。覚えております」


「あの菜の花は今年も咲いているだろうか?」


「はい、恐らくは…」

そう答えるしかなかったピダムを見て女王は


「ああ、お前も宮中から滅多に出ることなどないのに、解る筈はないな…」

そう、淋しそうに笑った女王の顔がピダムの心に棘のように刺さった。





***

その夜、女王の執務室を訪れたピダムは部屋に入るなり息を飲んだ。

何処から切り出して来たのか解らなかったが見事な桜の一枝と幾つもの大きな花器に沢山の菜の花が活けてあり、卓の上には彩り鮮やかな料理と酒が用意されていた。

政務報告の為にやって来たピダムはいつも通りの黒衣に政務報告書を携え、その場に立ち尽くしている。


「どうした?ピダム。何故座らぬのだ?」


女王がそう言ったのでピダムは


「私はお伺いする時間と場所を間違ったのではないかと、そう思いまして……何方かいらっしゃるのではありませんか?」


女王は「ふふふっ」と含み笑いをしてからピダムに


「こんな夜更けに誰を此所に呼ぶと言うのだ?お前と今宵は酒を飲みながら昔語りがしたいと思ってな、用意したのだ!」


「陛下…」


「とにかく飲もうではないか」


そうして女王とピダムは二人で桜と菜の花を肴に杯と杯を酌み交わし始めた。

互いの杯に酒を注ぎ、それを重ねる度に酔いが回り、二人の気持ちはそれに釣られてどんどんと昔へと戻り、数刻後にはすっかり出来上がっていた。


「陛下、そろそろ寝ませんか?」


「いや、まだまだ大丈夫だ。ピダム…私は眠くない」


ピダムは今までも何度も女王のその言葉を信じて眠れぬ夜を過ごして来た。

今夜も悶々とした夜を送ることを考えると、そろそろこの辺りで閨に女王を連れて行きたい所だった。

仕方ないのでピダムは女王に近付くと背後から女王を抱き締めて、こう切ない声音で囁いた。


「私のトンマナ…」


酔いが回って自分は公主なのだとすっかり思い込んでいる女王はその言葉に心を持って行かれた。


「ピダ…ム…」


女王はピダムに体を預けてピダムの体温を感じ、その香りに浸った。



その夜、女王の甘い矯声とピダムの満足気な吐息が菜の花の香りと共に仁康殿から漂うように微かに聞こえた。



春の夜、朧月の甘い調べにピダムは酔いしれ…

その朧月は漆黒の闇に抱かれながらも雲の隙間から菜の花畑をこっそりと垣間見ていた。


春の中の春の宵…


恋人たちは薄紅色に肌を染める。






☆★☆★☆

管理人、雪柳よりも菜の花が好きなのではないかと思うくらいにSSに菜の花登場してます(笑)

昨日車窓から見た河岸に群生している菜の花がとても綺麗で忘れられなかったのでした。