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SS私のピダム 月の泪

 06,2012 22:00


皆さ~~ん、こんばんは~(^-^)/

今日の関東地方は雨が降ったり、晴れたり…コロコロ変わるお天気でした。

今夜お届けするSSは少し季節外れになってしまいましたが…

待ち人Mさんのリクエスト『SS私のピダム 香り高きその名は』のその後にも続くお話でもあります(^o^)

そして…『SS私のピダム 金のトゥリゲ』や『SSS私のピダム 天の川』にも深く関わっています♪

では、よろしかったら続きをポチっとしてお読みになって下さいね~>^_^<







下弦の月が空に寂しげに浮かんでいる晩に…

ピダムは蝋燭が灯された廊下をゆっくりと歩いていた。

女王の唯一の色供の臣になって以来、そうして幾度か同じことを繰り返してきた。
その一つ一つの出来事が浮かんでは消え…また消えて浮かび…

ピダムは祭壇へと近付いて行く。


闇の中に葬り去られた魂を弔う為に、母ミシルが眠る霊廟で一人静かに祈りを捧げようとしていた。

ピダムは先ずミシルの遺影に香を捧げ、手を合わせた。


「母上、私は今度こそ必ず護りたいと(思っています) どうか、お力添えを…」

微動だにせず、ピダムは暫くの間、香の煙が燻る霊廟で祈りを捧げるのだった。






***

宮廷の権力闘争は苛烈を極める。

女王とピダムの母ミシルが命を掛けて、その座を争ったように…
今また、女王の後継をチュンチュとピダムが争う構図になっていた。

ピダムとしては女王の退位と共にその身を退くことを決心していたのだが…
チュンチュから見れば例えピダムがその身を退いたとしても『政敵』を野に放すことに違いなかった。

そしてピダムと女王の間に出来た子はピダムよりも更に強力な政敵に成りうるのだった。

二人の間に子が出来ることを恐れたチュンチュは女王の懐妊を意味嫌い、過去に何人かの子を腹にいる間に抹殺してきた。
女王自身にも解らないように巧妙に…


ピダムはそれが許せなかった。
己の権力保持の為に…ただそれだけの為に…
この世の光を浴びる為に宿った命を奪うチュンチュが…
殺してやりたいと思う程に憎く思えた。

ピダムは女王との子を護ろうと、今回はチュンチュだけでなく、宮廷の、いや、神国の人間全てを騙すことを決意した。

愛しい女王との子を一度はその胸に抱いて見たかった。
自身が一度も経験したことがない、父としてその胸に吾子を抱いて見たかった。
そうすることで自身の満たされなかった気持ちが 昇華されるような気がしていた。





***

その子が産まれたのは霪(長雨)の続く寒い夜だった。

女王は陣痛に長い時間苛まれ、時々意識を無くしていた。
ピダムは女王に付きっきりで、そんな女王の汗を拭い、体を擦り…甲斐甲斐しく世話をしている。


「んっ、ピ、ダム」


「陛下…ここにおります」


そう言ってピダムは女王の手を握った。


「ピ、ダ…あっ…うっ、ん…」


女王の苦しみを他所に、ピダムの耳許で神女が囁く。


「ピダム様、頭が見えて参りました。そろそろかと思われます」


「そうか、ならば控えの間にいる者にもそのように伝えてくれ、すぐに手筈通りに事を運ぶようにと」


「はい、解りました」


神女は急いで控えの間にいる者にピダムの伝言を伝えに行った。

もう一人の神女が女王に向かって

「陛下、もう頭が見えています。お辛いかと思いますが、力の限り息んで下さい」


苦しみに顔を歪めながら女王は


「ああっ、息む、の、だな…」

そう言うなり、腹に力を入れて見た。
だが、思うように息めず、何度かそうする内に女王の体力は尽き、意識が混濁し始めた。

「陛下、陛下、眠ってはダメです。お子が死んでしまいます」


「んっ、あっ、あーーーっ」

女王は力の限り息むと、そのまま気を失った。
と、同時にオギャーと産声を上げて子は生まれてきた。
臍のを切り、産湯に浸かって、白いおくるみに包まれた子を神女がそっとピダムに差し出した。


「ピダム様、おめでとうございます。王子様でいらっしゃいます」


ピダムはこの上ない慈愛に満ちた表情で我が子を見、その腕に子を抱いた。


(なんと軽くて頼りなげなんだ。これが陛下と私の…初めての子。私もこのように生まれてきたのだな。母を苦しめた挙げ句に…)


ピダムは小さな小さな手に触りながら


「そなたの名は『ウム』に決めた。霪の降り続いた夜に生まれたからな。ウム、気に入ったか?」


そう言うと赤子は嬉し気な表情をしたように見えた。
ピダムは神女に子を預けると紙に『霪』と書き、錦の布で作った袋の中にそれと翡翠と金でできた『トゥリゲ』を入れた。

そして別れの言葉を心の中で囁いた。

(ウム、父はお前を愛している。だが、ここにお前を置いてはおけない。許せ、ウム。もう、お別れだ)

そして控えの間に子を抱いて行き、そこにいたサンタクと夫婦者に子を預けると、こう言った。


「よろしく頼む。ここにこの子の名とこの子が誰の子であるか、それを示す物を入れておく。物心がついたら、この子に渡してくれ」


サンタクが少し悲しそうな顔をしながら

「司量部令、このお子さまのお名前は?何とお決めになったのですか?」


ピダムは困った奴だという顔をしながらも、笑いながらこう答えた。


「霪の続く夜に生まれたから『ウム』とした。私がピダムで『曇』だから、その子はウムで『雨』中々良いと思わないか?」


こんなに切羽詰まっている時でさえ、冗談めかしたことが言える司量部令をサンタクは凄い男だと思った。
思うからこそ、この方のお役に立ちたいと。


「ウム様。はい、素晴らしいお名前だと思います」

サンタクに名付けを誉められて、ピダムは少しだけ気恥ずかしかったが、そこは長年培った自制心で己を律し、こう命を下した。


「では、サンタク、そしてそなたらも頼んだぞ。早く行け」


「はい、司量部令。無事に私が倭まで送って参ります」


そう言うと一礼し、夫婦者と一緒に出ていった。

ピダムは4人を見送ると、女王の元へと急いだ。

血の気のない顔で横たわっている女王の側にかしずくと、女王の乱れた髪を手で直しながら


「陛下、陛下…あんなに可愛らしい子を私に抱かせて頂き、ありがとうございました」

気を失っている女王には、その言葉が伝わらないのは解っていたが…ピダムはそう言わずには居られなかった。

霪(ながあめ)はその晩も止まずに降り続いた。

翌朝目覚めた女王はピダムから子が亡くなったことを聞かされ、半狂乱になったが…
ピダムが女王の側を一歩も離れずに、それを見守り続けた。






***

それから5年の歳月が流れ…

ピダムは毎月欠かさずに、闇に葬られた我が子たちを母ミシルの霊廟で密かに供養して来たのだった。


ピダムは霊廟から出ると仁康殿の女王の元へと急いだ。

仁康殿の扉を入り、渡り廊下を曲がりとそこに人影が見えた。
女王が夜着のままで月を眺めているらしかった。

ピダムは足音を立てずに女王に近付き…


「陛下…遅くなりました」


そう言って、ふわりと女王を抱き締めた。
腰に回された腕を女王は愛しそうに撫でながら


「いいのだ、ピダム…今宵は月見をしていたら、あっという間に時間が過ぎてしまって…」


「私より月が宜しいですか?」


女王はピダムに背を預けながら


「いいや、そうではないのだ。いつか見た夢を思い出していたのだ」


「…お前に良く似た子どもの夢だ!」


ピダムの心臓がどくんと弾けた。


「私に似た子どもですか?」


「ああっ、お前に似た可愛らしい男の子が私のことを『母上』と呼んでな。そのまま行ってしまった」


ピダムは心の内を悟られまいと平静を装っていたが、女王の次の言葉を耳にした瞬間、その鉄壁の氷は破れることになる。


「ピダム、お前と二人、いいや、お前とお前の子どもに囲まれて生きていけたら…そんな余生が送りたいものだな…」


「陛下…」


(申し訳ありません、陛下。貴女と私の子は本当は生きております。ですが、それは決して明かすことが出来ない私だけの秘密。その秘密は私が死んだ時にだけ、貴女に伝わるようになっています。貴女と私、貴女と我が子。私たち三人がこの世の何処かで出会うことは二度とないのです)

ピダムの目から大粒の泪が溢れた。

それを知らない女王は


「ピダム、今宵は本当に月が綺麗だなぁ。このまま、お前と二人暫くこうしていても構わないか?」


ピダムは女王を抱き締めていた腕に力を少しだけ入れながら


「はい、陛下…陛下のお好きなだけここで月を見ていましょう」

そう言うとピダムは空に浮かぶ下弦の月を見上げた。

だが、その美しい月は溢れる泪でぼんやりとしか見えなかった。










☆最後までお読み下さり、ありがとうございましたm(__)m

このSS…『SSS私のピダム 夢と現の間に』とも関係してましたね~~♪

『霪(ウム)』君!

この名前が浮かぶまで中々このSSを発表出来ないでいました。

少し前に書いた『SS私のピダム 霪雨(ながあめ)』で『霪』を『ウム』と韓国語で発音することが分かって…ああっ、これだ!と思い、やっと名前を決めることが出来ました。

ピダムの息子ウム。

ナム君の二役でお願いしたいと思っています

最後に時系列は全く考慮してませんので…あしからず(^o^ゞ





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Tags: トンマン ピダム

Comment - 2

2012.08.06
Mon
23:47

うさこ ̄(=∵=) ̄ #HuG4J.mM

URL

こんばんは♪

こんばんは…

『SS私のピダム 月の泪』拝読させて頂きました。

このお話はとてもいいなーと感じました。

テヤン様は本当にすごく上手に書かれるなーと ̄(=∵=) ̄は思います。

涙が…

パワーもありシャープでもあるテヤン様のお話はいつも ̄(=∵=) ̄の心に響きます♪

ありがとうございました。

ぺこりん…

編集 | 返信 | 
2012.08.07
Tue
01:11

テヤン #s6bbxX4M

URL

慈愛がテーマです♪


うさこ ̄(=∵=) ̄さんへ



>こんばんは…

こんばんは~(^-^)/
ご訪問&コメントありがとうございます♪


>『SS私のピダム 月の泪』拝読させて頂きました。
このお話はとてもいいなーと感じました。

ありがとうございます>^_^<
いい感じですか?ふふっ
テヤンは最初の出だしが好きです!
左右に蝋燭の灯りが点り…そこを霊廟に向かって歩いていくピダム…
厳かで…幽玄で…そして美しいその姿。
もう私の中のピダム(ナムギル)は神格化しちゃってるのかもしれませんね~~
今夜から『ピダム教』普及活動開始?(爆)


>テヤン様は本当にすごく上手に書かれるなーと ̄(=∵=) ̄は思います。
涙が…

涙が…ポロっと…出ちゃいましたか?

このお話のキーワード。
『月』『泪』『霪』『曇』という漢字は『陰』のイメージですよね?
でも、それがピダムの父親としての深い愛情から『陽』に満ち溢れる。
哀しいんだけれど、限りなく温かい。
そんな感じで、一気に書き上げました(^o^ゞ


>パワーもありシャープでもあるテヤン様のお話はいつも ̄(=∵=) ̄の心に響きます♪
ありがとうございました。

お褒め頂き、ありがとうございます>^_^<

でも、テヤンは、うさこ ̄(=∵=) ̄さんのお話は幽玄で色彩感覚豊かで…そして優しく。
時には艶やかに悩ましく。
凄いなぁ~って思っていますよ♪

この世界への扉は うさこ ̄(=∵=) ̄さんが開いて下さったのですから。
テヤンの先達として…これからもよろしくお願いしまーす(^з^)-☆


また、遊びにいらして下さいね~





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