SSS私のピダム 胡蝶の夢

土砂降りの雨の後に…

ふっと心和むお話をと思い書いて見ました♪

よろしかったら続きをポチっとしてお読みになって下さいね~(^^♪





土砂降りの雨が小半時ほど降り続き…
雨が上がるとからりと晴れて再び太陽が雲の隙間から顔を覗かせた。

雨の雫で内苑の草木が煌めいて見える。

それを渡り廊下の真ん中に立ち止まってぼんやりと見ていた女王の、その目の前を羽根をひらひらはためかせながら一匹の蝶が飛んで行った。

蝶は咲いたばかりの萩の花に止まり羽根を閉じた。

秋めいた風がそよりと女王の頬を掠めて吹き…

その風に乗ってもう一匹の黄色い蝶がやって来た。

互いを見つけた二匹はくるくると踊るように舞って…

まるで恋人同士のようにいつまでも萩の花の上で互いを追い…

暫らくすると、どこかに飛んで行ってしまった。



蝶のようにピダムと二人…何処か遠くに飛んで行けるのなら…

女王はふーっと息を吐いた。
秋めいて来たとは言え射し込む日差しはまだまだ夏のそれと変わらず…
女王は毎日の激務の為か、幾分疲れた顔をしていた。





***


夜の帳も落ち、涼しい風がそよそよと吹く、その夜半に…

ピダムがいつものように女王の寝室にやって来た。


「陛下、ピダムです」


「ああ、入れ」


ピダムは茶器らしきものを盆の上に載せ、にこにこしながら現れた。


「陛下、お待たせ致しましたか?」


「いいや、丁度良いところに来てくれた。何を嬉しそうに持っているのだ?」


女王もピダムに釣られてにっこりと笑った。
ピダムは女王の方を向きながらゆっくりとこう言った。


「昼間、陛下のお姿を遠くから拝見しましたところ、お疲れのご様子でしたので、人参を煎じて参りました。力が付きます。どうかお飲みになって下さい」


ピダムの顔が侍医のそれと同じように見えた女王は


「ピダム、まるで侍医のようだな。そう言えばお前も薬師と言って良いほど薬には通じているのだ。どうだ、明日から司量部令を辞めて、私の侍医になるか?」


ピダムは再びにこにこしながら


「陛下がそうおっしゃるのなら私はその方が嬉しいです」


女王はピダムがあまりに嬉しそうな顔をしたので、こう質問した。


「何故だ?何故、侍医がそんなに良いのだ?」


「侍医になればいついかなる時も陛下のお傍に侍ることが出来ます故に…」


女王はピダムの答えに笑いながらこう答えた。


「ピダム、お前は本当に変わらないな。己の心に正直に生きている。私はそれが羨ましい」


「陛下、私が正直でいられるのは陛下の御前だけです」


二人は互いを見ながらクスクスっと笑い合った。
笑いながらピダムはゆっくりと歩を進め、部屋の中央にある卓に盆を置くとこう言った。


「陛下、今宵は少し昔語りなどしながら私と此方でお茶を飲みませんか?」


ピダムが閨よりも茶飲みを優先するなど有り得ない、そう思った女王は自分の耳を疑った。
そこでピダムに確認するかのように


「ピダム…お前、今、そこで茶を飲もうとそう言ったのか?」


「はい、陛下」


ピダムはクスリッと笑うと先ずは煎じて来た薬茶を卓の向こう側に置き


「陛下、どうぞこちらにお掛けになって此れをお飲み下さいますように…」


女王はピダムが本気でそう言っているのを確認するとピダムに言われるままに席に付き、茶碗を手に取った。
朝鮮人参特有の香りが微かに鼻を突く…女王は恐る恐る薬茶を口に含み、ごくんと飲んでみると…
思ったよりもずっと美味しかった。不思議に思った女王は


「ピダム、とても美味しい。人参のあの嫌な香りも甘さもしない。何故だ?」


ピダムは得意げな顔をすると


「陛下が人参の香りをお好きでないのは知っていましたから。色々試して見ました」


「それでどうすればこのような味が出せるのだ?」


するとピダムはきっぱりとこう告げた。


「それは、お教え出来ません!」


女王は「えっ」と言う顔をして


「何故だ?ピダム?」


「私だけに作れるから貴重な薬茶になるのです。お教えしてしまったら私はお払い箱になってしまうではありませんか?」


ピダムが冗談ぽっくそう言ったので女王は


「教えてくれないのなら今夜はお前を閨には入れない。そう言っても教えてはくれないのか?」


ピダムは至極真面目な顔でこう答えた。


「陛下、今宵はお疲れのようなので色供は辞退させて頂こうとそう思って居りましたのに…陛下はピダムに色供をせよ!とそうおっしゃっておられるのですか?」


女王は暫し目をパチクリさせながら…


「そ、そうではない。あっ、つまり…その薬茶の作り方が知りたいだけで…お前とその…」


ピダムは懸命に笑いを堪えながら


「陛下、今宵はそれを飲まれたら私が閨で『寝物語』致しましょう。ですから、早く飲んであちらに参りましょう!」


目で閨の方をちらりと見ながらピダムがそう言うと


「閨でなのか?」


「お嫌ですか?」


女王は少し困った顔をして


「お前と閨を共にしたら…私は、私は自分で自分が解らなくなってしまうから…」


「解らなくなってしまう?何故です?それがお嫌なのですか?」


そう言うとピダムは女王にさっと近づいて後ろからふわりと抱きしめながら耳元で囁くように言った。


「陛下がお疲れなのに、私が陛下を余計に疲れさせることをするとお思いなのですか?」


「ピダム…」


女王の三日月型の痣に唇でそっと触れて


「陛下、今宵はゆっくりお休みになって下さい。さあ…」


と言うと、ピダムは女王の前に右手を差し出した。
女王は立ちあがるとピダムの手に己の手をそっと乗せた。
その手をギュッと握るとピダムは女王を寝台まで導き、そこに座らせ…掛け布団をめくり
女王を寝かせると自分は反対側から寝台にごろりと横になり…
仰向けの女王とうつ伏せのピダムがぴったりくっ付いている形になった。
ピダムは女王の方を向きながらこう切り出した。


「陛下、どのようなお話を致しましょうか?沢山の本を読まれている陛下ですから、今更知らないお話はないかもしれませんが…」


女王はにっこりほほ笑むと


「では、ピダム、私がお前に寝物語をしようか?どうだ?」


ピダムはびっくりしながらもこう聞き返した。


「陛下が私の為に寝物語を?」


「うん、可笑しいか?」


「いいえ。嬉しいです」


ピダムはそう言うと少年のように目をキラキラ輝かせた。

女王はピダムの透き通った真っ黒な眸を覗きこみながら、ゆっくりと話始めた。


「寝物語とは言えないかもしれないが…今日の昼間に二匹の蝶が仲良く舞うように飛んでいるのを見てな。お前と私が蝶であったら、あのまま何処へでも飛んで行けるのに…そんなことを思ったのだ」


「陛下…」


「『荘子』にもあるだろう。今生きているこの身が夢で、夢で見た蝶が現生であるかもしれないと。お前はどう思う?ピダム?」


ピダムは暫し考えるとこう言った。


「つまりそれは陛下、詰まる所、私とずっと一緒にいたい。そう言うことをおっしゃりたいのですか?」


あまりに実直なピダムの答えに女王は答えに詰まり押し黙った。


「無為自然…であれば、陛下、やはり今宵もピダムが『色供』致したく存じます」


そう言うとピダムは女王に覆い被さり、唇を奪うと甘やかな口付けで女王を溶かした。


ぁ、ピダム、ぁ、ぅん…


女王の息は段々と苦しくなり、終いには頭がぼうっとして来た。
ピダムがいつものように女王の乳白色の身体に舌を這わせ女王を喘がせている途中、急に女王の声が聞こえなくなったのを不思議に思ったピダムが顔を上げて女王の顔を覗きこんだ。
すると既に女王は夢の中にいるようで…

ピダムはすやすやと寝息を立てて眠る幸せそうな女王の乱れた衣を直し、頬に優しく触れながら心の中でこう呟くのだった。


陛下、安らかにお眠り下さい。
そして、十分にお休みになられたら、このピダムに陛下の聖恩を再びお与え下さいますように…




一方、女王は青空の元、あの蝶たちのようにピダムとはしゃぎじゃれあう夢を見ていた。
遠い昔、内苑にある大きな楠で蝉採りをした思い出…
ピダムが楠に登り、公主だった自分が下から蝉の居場所を教えている。


「ピダム、ピダム、違う、違うもっと右だ!」


「えっ、公主さま、蝉はどこにいるんですか?」


「右だ!ピダム。右側の少し上の方にいる」


ピダムはあまりの高さに俊敏には動けず


「もっと右ですか?」


「ああっ、だから、もっと右の、あっ、…ピダム逃げてしまったぞ」


公主の残念がる声が下から聞こえて来た。
それを聞いたピダムが


「公主さま、ここまで登った俺は馬鹿みたいじゃないですか~」


と大声でそう叫んだものだから、公主は可笑しくなって声を立てて笑った。


「あーはははははっ、ピダム。そうだな、あははははっ」


「公主さまぁ、笑うなんて酷いですよ!」




ふっと隣で眠る女王が「ふふふっ」と幸せそうに笑った。

それを見たピダムの頬も自然と緩み…
女王をそっーと引き寄せて抱きしめると暫らくの間その温もりを感じて…
やがてピダムも自然と夢の世界へと堕ちて行った。




「ピダム、今度は蝶を捕まえてくれるか?」


「えー、もう嫌ですよ、公主さま」


「ピダム…そんなこと言わずに、な、ピダム」


「はいはい、公主さま」






ピダム…お前とならば、どんな時もどんな姿になろうと生きて行ける…

私の蝶は夢の中でも現世(うつしよ)でもお前だけなのだから…









☆最後までお読み下さり、ありがとうございました<(_ _)>

思いっきりピダムってる女王トンマンになっちゃいました(笑)


ここでちょっと注釈を。。。

『胡蝶の夢』とは普通、夢と現実との区別がつかない。世の儚さの意味で使われる諺ですが…

テヤンはこのSSSの中で書きたかったテーマはそれではなくて。

『 荘子流の『無為自然』⇒『逍遥遊』それは目的意識に縛られない自由な境地であり、その境地に達すれば自然と融和して自由な生き方が出来る。
夢の中の蝶の姿と現実の人間としての姿の内のどちらが真実かを論ずるよりも、いずれも肯定して受け入れ、それぞれの場で満足して生きれば良いのである。
万物は絶え間なく変化をし続けるが、その実、本質は何ら変わることがない 』


つまりトンピの互いの立場や置かれる状況がどんなに変わっても、それを肯定し受け入れることで、二人の愛は全く変わることなく続いて行く、みたいな感じのことを書きたかったんだと思います。

ごめんなさい。注釈の『』の中はくどくてちょっと難しいので無視して下さい。

注釈入れて、逆にホッと出来なかったかもしれませんねぇ(^^ゞ



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Comment

kiki #7bSiSdiQ

古典文学の大家?!

いつも、教養あふれる、テヤンさんの、ブログに、足を踏み入れるの、申し訳ない~と、思うことしばしば、、、稚拙な私は、「???」なことがいっぱいです。
色々、勉強させてもらってます~~

でも、今日は、やはり、うれしさに、足跡残します~~

見識の高いナンギラには、ついてゆけない?!笑
テヤンさんのように、自分磨き<内面だけでも~~笑>してゆきたい!と、、

今日は、ほんとに、夢じゃないかと??おもう日になりましたね。
『胡蝶の夢』とは、ちと、ちがいますよね~?!

2012/09/04 (Tue) 21:06 | URL | 編集 | 返信
テヤン #s6bbxX4M

萌え~~なだけな女です♪


kikiさんへ


こんばんは(^^)/

>いつも、教養あふれる、テヤンさんの、ブログに、足を踏み入れるの、申し訳ない~と、思うことしばしば、、、稚拙な私は、「???」なことがいっぱいです。
色々、勉強させてもらってます~~

すみません、要らぬ言葉が多すぎて…解り難くて申し訳ありませんm(__)m
実は…リア友にも難し過ぎるとか言われて凹む時もしばしば(笑)
だって…それしか書けないんだもん_(^^;)ゞ


>でも、今日は、やはり、うれしさに、足跡残します~~

わーい、ありがとーございますo(^o^)o


>見識の高いナンギラには、ついてゆけない?!笑
テヤンさんのように、自分磨き<内面だけでも~~笑>してゆきたい!と、、

今日は、ほんとに、夢じゃないかと??おもう日になりましたね。
『胡蝶の夢』とは、ちと、ちがいますよね~?!

ナム君ってホントに『ナップンナムジャ』ですよ♪
焦らして焦らして、それでいきなり『ファンクラブ』ですから。

『見識』高くて『計画的』で『計算』も出来て…ゴヌク地で行けるんじゃないの!とも思ったりしました(笑)

私の自分磨きは剣客商売絡みですから、やらないと体壊してしまうので仕方なくやってるだけです(^_^ゞ

今度こそ、ファンクラブ&ファンミが本来の意味の『胡蝶の夢』にならないことを願いま~~す(^-^)v

あの、夢見る妄想女テヤンがやってる萌え~~なだけのブログなんで…
懲りずに遊びにいらして頂けるととっても嬉しいです♪

よろしくお願いしまーす(^3^)/



2012/09/04 (Tue) 22:19 | URL | 編集 | 返信

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