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SS私のピダム  後朝の別れ

 18,2012 01:53


冬晴れの澄み渡った紺碧の空に雲が一つぽかりと浮かんでいる。

遠い海原にいるであろう愛しい女に想いを馳せながら、ピダムは眩しげにそれを見上げると、戦の最中で有りながら自然と心は和み余裕さえも感じられる。

自分は此処で何をしているのだろう。その疑問に答えは直ぐに返って来る。

女王に従い、共に歩んで来た戦友であるユシンと戦う為とは…

片方の口の端を上げてピダムは苦笑した。


(ユシン、お前が陛下より伽耶を選ぶとは…)

女王を支え新羅の双璧と言われたユシンとピダム。

女王を愛していたのは自分だけではなかった筈なのに。

そのユシンが女王に対して謀反を起こしたことをピダムは未だに理解出来ずにいた。



中庭に一人佇むピダムの元へヨムジョンがやって来て


「陛下は無事に神国を出られたそうです」

と報告をした。


報告を受けたピダムの顔が一瞬パッと明るくなったのをヨムジョンは見逃さなかった。


「上大等、吉報と合わせて凶報もございます。地方の貴族達の動きをユシンに封じられてしまいました」


「何?ユシンめ。やるではないか…だが…陛下が神国を脱出なさったのなら構わない。いつでも覚悟は出来ている」


「上大等…上大等も脱出なさっては如何ですか?」


「だが…そうなるとユシンは私ではない誰かに罪を押しつけるに違いない。アルチョン等に害が及ぶのは私が我慢ならぬ!」


「上大等…」


「とにかくギリギリまで奴をこの明活城に引き付けろ、陛下が此処にいると思わせて」


「はい。解りました。上大等」


命令を受けたヨムジョンが去って行くのを見送った後もピダムはその場に留まり、相変わらず雲を眺めている。


「陛下…ご無事に船出されたようですね。ピダムはこれで思い残すことは御座いません。どうかご無事で」



(この想いをどうか届けてくれ)

ぽかりと浮かんだ雲にピダムは語り掛けるようにそれだけ言うと自室へと戻って行った。





***

冬の海は荒れに荒れていた。

トンマン達を乗せた船も然り。

大きなうねりに翻弄されて、今にも波に飲み込まれてしまいそうだ。

ギシギシと船が軋みドーンと打ち付ける波の凄まじい音に眠れずにトンマンは寝台に横たわっていた。

眠れぬ理由はそれだけではなかった。

毎夜、隣で眠っていたピダムの温もりがないのが心細くて寂しくて寝付けずにいたのだ。


「ピダム…どうか無事で居てくれ」


気が付くとトンマンは白い敷き布をギュッと握り締めて居た。


(ピダム…ピダム…ピダム…)


ピダムの名を呼び、身も心も焦がし疲れたトンマンはいつの間にか眠りに落ちて行った。






moblog_b7d44e05.jpg


ピダム此処にいたのか・・・


「陛下…」


上大等の紫色の衣を着たピダムが手をさしのべている。


「何だ?ピダム。何かあるのか?」


不思議そうに女王が首をかしげると


「陛下。御手をどうぞこちらへ。ピダムへお預け下さい…」


おずおずと女王がピダムの手に己の手を重ねると、ピダムはそっと女王の手を握った。


「陛下。何も御座いません。ただ私が陛下の御手を握りたかっただけです」


そう言うとピダムはきらきらと瞳を輝かせてニッコリ笑った。

釣られて女王も微笑みながら


「ピダム…お前は変わらないな。その真っ直ぐな心でどんな壁をも乗り越えて来る…そんなお前が私は好きだ」



「好き…なだけですか?愛してはいないのですか?」


ピダムは少し意地悪な言い方をした。



「ああっ好きなだけだ」


女王があまりにそっけなく答えたので、

ピダムは女王の手を引っ張り自分の胸に閉じ込めてこう言った。



「陛下は嘘がお上手になられました。私は時々それを見ているのが辛くなります。どうぞ私と二人きりの時は本当の心を見せて下さい」


そう言うなり唇を奪い女王の息を奪った。

女王の口中はピダムの舌で執拗にかき回されて、女王は次第に身体が熱くなるのを感じて


「ああっピダム…お前の言う通りだ…私はお前を愛している」


そう言って自分を抱き締め返してくれる女王が愛しくて。

ピダムは女王を抱き上げた。


「陛下…今宵もピダムに伽をお命じ下さいますか?」


「ピダム…伽などと言うな…私がお前と閨を共にしたいのだ。もうこれ以上は言わせるな!ピダム…」


少し拗ねた女王の姿を見たピダムが、それ以上はない優しい目をして言った。


「陛下……陛下……愛しています」



夢の中でさえお前に(陛下に)会いたい。

互いを想う心は現世の仮の姿を離れ自由に夢を行き来する。

後朝(きぬぎぬ)の別れが二人を分かつその時まで…





☆★☆★☆

このお話は「私のピダム」エピローグの続きです。

別れて尚も互いを想う気持ちが夢の中での逢瀬へと繋がっています。
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