スポンサーサイト
  •  --, -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
SS私のピダム 菜の花畑に桜舞い

あれはまだ女王に即位したばかりの春の一夜。

満月が恐ろしい程に黄金色に輝いていた夜だった。


今宵も当に満月。

その黄金色の月に照らされながらそっと目を閉じると……

月城の石垣を取り囲むように咲き乱れ、辺り一面を黄金色に染める菜の花たち…

そこでピダムと一夜を過ごした思い出が鮮やかに蘇る。




月城の桜が満開となり城では司量部令主催の花見の宴が盛大に催されていた。

何時もは真面目な上将軍ユシンでさえも酒を飲んで酔った為に大きな声で隣に座るウォリャと楽しそうに談笑してる。

それ程に月城に咲き乱れる今宵の桜は妖しい程に美しかった。


盃の中に薄紅色の桜の花びらが一つハラハラと舞い落ちたのを見た女王は何時もは人前では決して飲まない酒を口にした。


「なんと粋な振る舞いをする桜よ。私に酒を飲ませるとは…」

と独り言のように囁いた。

居並ぶ人々の声にかき消されてお付きの女官さえも気付かなかった言葉をただ一人司量部令ピダムだけが気付いた。


(陛下が珍しく御酒を口にされた…)


女王の優雅な所作を見逃すまいとピダムはじっと女王を見詰めた。

女王とピダムの周りだけ時間が止まったようにゆっくりと時が過ぎて行く。


更に時が経つと酒を飲み過ぎてその場に突っ伏して眠る者、宴を抜け出す者が続出した。

公式の宴ではあったが最初から無礼講とふれわたっていた為、女王がいつの間にか退出しても誰もそれに気付かないでいた。


女王は仁康殿に戻ると女官に命じて就寝の準備を始めた。

女王の堅苦しい正装を脱ぎ、夜着に着替え髪を解き櫛梳り、やっと解放されたその折れそうな程にほっそりとした身体を寝台に横たえていた。

其処に司量部令が今宵の宴の御礼の挨拶に参ったと女官が取り次ぎに来た。

女王は夜着に上衣を羽織ってピダムを出迎える準備を整えると女官に向かい


「司量部令を通してくれ……それと司量部令が部屋に入ったら、皆下がって休むが良い」

と声を掛けた。


間もなくピダムが足音も立てずに部屋の開き戸の前まで来て声を掛けた。

「陛下。入って宜しいでしょうか?」


「入れ」


ピダムが部屋に足を踏み入れると静かに戸が閉まり、穏やかな表情で女王がそれを迎えた。


「ピダム。ご苦労だったな」


「陛下。お楽しみ頂けましたでしょうか?」


「ああっ、十分過ぎる程に楽しんだ。今年の桜は本当に美しい」

女王が嬉しそうに話をするのを見てピダムは更に続けた。


「陛下。夜桜も美しいですが、今宵は満月、月の光に照らされて城外の菜の花が黄金色に輝いて見えます。如何でしょう。これから私と花見に出掛けませんか?」


「ピダム。冗談を言っているのか?」


ピダムは少し困った顔をしながら


「いいえ、陛下。本気で申し上げております。ピダムがお守りします故。何卒」

と言うなり深く頭を垂れた。

至極真面目なピダムに女王は


「お前がそう言うのなら…行って見ても良いが。秘路から抜け出すのか?」


「はい。陛下。左様でございます」


「では暫し此処で待て。着替えをする」


そう言うと女王は奥の部屋に入って行った。



ピダムが片手に灯火を持ちながら、もう一方の手で女王の手を引き秘路を導き歩く。

二人しか知らない秘路を実際に歩いたのは今夜が初めてだった。


「ピダム…暗いな。でもお前と二人なら怖くない」


「陛下。もしもの場合私がご一緒出来るかどうか解りません。どうぞその時の為にも時々秘路に入り、あらゆる路を把握して下さい」


「これを使わないで済むのが一番だがな…」

そう言って女王が小さなため息をついた。

ピダムはそんな女王を気遣い


「心配なさらないで下さい。ピダムがこの身に変えて陛下も神国もお守り致します」

そう言うとピダムは女王の手をギュッと握った。




秘路の二重扉を開けてピダムが先に外に出て辺りの様子を伺っいる。

精神を研ぎ澄まして人の気配を感じとろうとしているピダムの身体からピリピリとした気が湧き出ている。

一緒に居る女王は何時にも増して辺りを気にするピダムの様子に少し不安を感じていた。

暫くしてピダムの合図を確認してから外に出た女王は感嘆の声を上げた。



「……綺麗だな!」


見渡す限りの黄金色!遠くに月城の桜が霞のように見える。

その頃、城内ではある事件が起こっていた。




続きます♪
☆★☆★☆

管理人の拙いお話にお付き合い下さいましてありがとうございます<(_ _)>

そして拍手をありがとうございます。

今回のお話は下の写真を見た瞬間に頭の中で閃きました!!

慶州・新羅の歴代の王の居城跡 半月城

石垣を半月の形に積み上げた為にそう呼ばれたそうです。

女王やピダムが同じ風景を見ていたと思って・・・

皆さまもどうぞ一緒に新羅の時代にタイムスリップ致しましょう。



moblog_e93c69d6.jpg



スッカラ4月号 この写真はそちらに帰属致します。
スポンサーサイト

Comment - 0

What's new?

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。