SS凍てつく山で 赤と黒5


「海の底も綺麗だけど…朝の冬山の静けさも好きなんだ」



昨晩のゴヌクのその言葉に誘われるようにテラは翌朝ゴンドラに乗っていた。

テラの目の前には真っ白なスキーウェアに身を包んだゴヌクが座っている。

ゴヌクは外の様子を見渡して…


「新雪でスキーがとられ易くなってるから無理はしないで、僕について来て」


「貴方は何でも出来るのね」


そう言ってテラが優しく微笑むと


「君だってアウトドアスポーツなんてやらなそうに見えるのに…結構お転婆なのは知ってるよ」


ゴヌクは笑いながらそう答えた。



やがて山頂に達すると二人はゴンドラから降りた。

凍てついた空気が肌に刺さった。


「今日は少し気温が低く過ぎて、静けさどころじゃないかもしれない。雪が凍って危ないからゆっくり行こう」


「貴方に着いて行くわ」


そうして二人は山を降りて行った。

途中難所が何回かあったがテラはゴヌクの支持通り慎重にスキーを滑らせた。

山の中腹まで来ると気温も大分上がり、ゲレンデ自体が広がった為二人はそこで休憩を取ることにした。



「綺麗ね!貴方の言った通り、朝一番は空気は美味しいし誰もいないから貸し切りね」


「はははっはっはっ」


カラッとした笑いを見せるゴヌクをテラは初めて見た。

いつも何処かに陰を湛えていた笑顔ではなく。

(背負っていた物を下ろすことが出来たのね。良かったわ。テソナ)


テラもすっかり気分が良くなって

「朝ご飯は殆ど食べられなかったからお腹が空いたわ。早く降りて何か食べましょう」


「OK。じゃあここからは競争だ!」


「良いわよ。私が勝ったら今日一日私とずっと一緒に居てくれる?」


「駄目だよ。それじゃ」


「何故?」


少しだけ眉間に皺を寄せたテラが振り向くと


「勝たなくとも、ずっと一緒にいるつもりだから」


「えっ……」


テラは暫しの沈黙の後に


「じゃあ、私が勝ったら…いっ……いて」


そう言うとテラはゴヌクを置いて先に出発した。


「ヌナ…なんだよ。先に出発するなんてズルいぞ」


テラの言いたかったことが何であるのかゴヌクには分かっていた。


(テラ、君が僕のところにやって来る限りずっと一緒にいる。

でも僕が君の居るあの場所へ戻ることは出来ない。死ぬまでずっと…)

ゴヌクはテラの後ろを追いかけるように滑り降りて行った。





★続きます。
今回はちょっと短かかったですね(^^ゞ
それにイチャイチャも全くありません(笑)
ゴヌク&テラはワンシーンしか頭に浮かばないことが多い管理人です。










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