拍手5000打記念リクエスト SS私のピダム 小夜鳴鳥(サヨナキドリ) その壱

皆さん、こんばんは~(^o^)/

遅れていた拍手5000打記念リクエスト作品を…

日曜日のこんなに遅い時間ですがUPしたいと思います!

hさん、お待たせして申し訳ありませんでしたm(__)m

ただ、お話が長くなっていて何話で完結出来るか解りません(^-^ゞ

すみません、まだ半分も書けてないんで~す(笑)

とは言え、管理人楽しみながら書いてますので気長に待てるわ!私(^-^)v

と思われる方は続きをぽちっとしてお読みになって下さいね~





眩い濃紫色の大等の服を新調したばかりの者たち、煌びやかな黄金の鎧に身を包んだ者たちが一堂に介する新年最初の便殿会議。
玉座へと続く赤い毛氈の上を女王はやや大股ながらシャランシャラリと王冠から垂れ下がる金細工の飾りと豪華な金色のトゥリゲを鳴らしながら優雅に…そして堂々と進んで行く。

年を重ねる毎にその﨟闌けた(ろうたけた)美しさは輝きを増し、その威厳は見る者全てを屈服させるほどに強く…
そこに居並ぶ頭の切れる文官たち、屈強な体躯を誇る武官たちをも圧倒する。


玉座への階段を昇り正面を向いて、ゆっくりと玉座に腰を落ち着けた女王が…
にっこりと微笑みながら鈴が転がるような声音で新年最初の御言葉を告げる。


「皆、息災で何よりです。こうして一堂合い揃って初春を迎えられることを嬉しく思います」


それに呼応するかのように上大等ヨンチュン公が朝方の女王の私室と同じように


「初春の御祝いを申し上げます、女王陛下」


と頭を下げると、それに続いて一同が


「初春の御祝いを申し上げます、女王陛下」


便殿に男たちの野太い声が響き渡る。
その余韻が消えると同時に再び、ヨンチュンが祝いの言葉を続けた。


「陛下の御代が磐石であらせられますように、力の有らん限り努力致す所存で御座います。そして本年が陛下にとって幸多き一年となりますように、臣下一同合い揃ってご挨拶申し上げます」


こうして『参賀の儀』を終えた一同は早速議案に取り掛かった。
人事全般は殆ど変わらずと上大等から発表がなされ、細かい部分については各部の長に書簡が手渡された。
実はこの書簡を作成する為に昨晩女王とピダムは時間を取られていたのだった。

次に国の柱の一つ、軍事関係については兵部を代表する上将軍ユシン公から冬の間の軍の配置、訓練等について事細かい報告がなされた。

礼部のミセン公が翌月初旬の鬼やらいの儀式の件をさらりと言ってのけると…
残りの侍衛部、司量部、調府、内省などは特にこれといった報告はなされずに…そろそろ会議も終わろうとしていた、そんな時に…

上大等であるヨンチュン公がこう口を開いた。


「陛下、僭越ながら臣ヨンチュン申したき儀が御座います」


女王は余裕の笑顔を見せながら


「何です?ヨンチュン公、急ぎの案件ですか?」


そう言ってヨンチュンの顔をじっと見詰めるとヨンチュンが


「はい、火急と言っても差し支えありません。実はお世継ぎの件で一言進言致したく…」


「何だ、世継ぎの件とは。朕には確かに世継ぎはいない」


ヨンチュンは言葉を選んで慎重にこう進言した。


「はい、陛下にはお世継ぎはいらっしゃいませんが…まだお子さまを諦める御歳とも思われませぬ。ですから陛下…本年はその陛下に仕える『色供の臣』をお増やしになって、その可能性を更に強固なものとするのはどうかと…臣ヨンチュンは提案致したく…何卒陛下の広き御心を持ってこの願いをお聞き届け下さらないかと切にお願い申し上げます」


そう言い終わると深く頭を垂れるのだった。


便殿の空気が一気に変わり…
皆が声を潜めて女王の顔色を伺っている。


「あい、解った。ヨンチュン公、熟慮する故、時間を貰いたい」


ヨンチュンの眸を射るような目で見ながら、そう答えた女王をそのヨンチュンとは反対側の列に連なる司量部令ピダムが心配そうな面持ちで見詰めている。
その瞬間、ピダムの直ぐ横にいる目尻を下げて魅惑の微笑を浮かべているチュンチュの耳飾りがチリッと微かに揺れた。

そんなに嬉しいのか、チュンチュ…

ピダムはその微かに震えるトゥリゲが愉しげな音色を奏でているのを不快に思い…
女王の心中を想像するや否や、厚顔無恥のその男をこの場で叩き斬ってしまいたい衝動に駆られたのだった。
黒衣のピダムが吐き出す『怒気』があまりに凄まじく、宛ら地獄の閻魔大王が現世へと送り出す死神のようにも見えて…
ヨンチュン側の列に陣取った大等や武官らは大いに肝を冷やした。

一瞬即発…
宮中の権力闘争はこの年元日から激しさを増した。




**

便殿会議が行われていた時分には燦々と輝く太陽の光が厳冬の最中(さなか)だと言うのにほんのりとした温かさを地上へ届けてくれていた。
しかしその温かさも日が傾き出した頃にはすっかり消えて徐羅伐の街に厚い雲が垂れ込み始め…
雲の隙間から微かに見える朧気な満月さえも凍える程の冷気を運んで来た。

その内にちらほらと雪が降りだした。
文字通り新年最初の『初雪』だ…

仁康殿の中庭へと続く渡り廊下に佇む女王と…その直ぐ後ろに寄り添うようにして立っているピダム。
女王が掌に雪を乗せてピダムにそっと差し出す。


「ほら、ピダム見えるか?」


「はい、陛下…」


じっと女王の掌を見詰めて微動だにしないピダム。


「こうして今年もお前と一緒に初雪を見られたことが嬉しくて…なぁ、ピダム…」


そう言って優しく自分に微笑み掛けている愛しい女(ひと)をピダムは深淵の眸でじっと見詰めている。
すると茶水晶の眸が急に暗くなったと思うと女王がこう言った。


「来年もお前とこうして初雪を見られるのだろうか…?」


女王はそれきり口を閉ざした。

便殿会議でヨンチュンの進言した言葉は『色供』の臣を増やせと言うことだったが…
裏を返せばピダムに妻を娶らせ唯一の『寵臣』でなくなるようにしろ、と言う意味を含んでいたのだった。

ピダムは震える女王の肉の薄い背中をその黒衣の袖を翼のように広げて覆う。
凍てついた風や舞落ちてくる真っ白な雪から女王を護るように…


「陛下…お泣きにならないで下さい」


「だが、ピ、ダム…『賽』は投げられてしまった」


気丈にそう言った女王の頬には泪が筋となって流れ落ち…
ピダムはその泪を内衣でそっと拭い、女王が泣き止むまでその背中を撫で細やかな身体を黒い翼で抱き続けた。
静寂の中、仕掛けられた罠に捕まった番いの小鳥のように…
女王とピダムはそっとそっと身を寄り添い合わせ…互いの魂を抱き締め合うのだった。




**

女王と別れたピダムが司量部の執務室へと戻るとそこには一人椅子に座ってじっとピダムの帰りを待っているソルォン公の姿があった。
正月元日は便殿会議が終わるとその日一日は仕事をせずに家路へ着くのを慣例としていたので…扉を開けて部屋に入ったピダムは少し驚いた顔をした。


「ソルォン公、如何されましたか?」


ソルォンはピダムの顔をじっと見詰めながら


「ピダム公、貴方をお待ちしておりました」


「ソルォン公…」


「陛下は如何されるか、既にご決断なされたのですか?」


ピダムは顔を左右に振りながら


「いいえ、まだ何も仰せにはなりません。ただ…ただお辛いご様子でした」


ソルォンはピダムの眸を射抜くような強い眼力でピダムに迫る。


「ピダム公、貴方の方こそお辛くはないのですか?」


「ソルォン公…」


ピダムの顔が微かに歪む。
ソルォンの声がより低くなり…恰も父が子に何かを言い聞かせる時のようにゆっくりと語り始めた。


「ピダム公…貴方さまが陛下のお側にいたいと本心からそう思われるのであれば、決して諦めてはなりませね。何があろうと…どんな困難が待ち受けていようと最後まで御自分の想いを貫き通さねばなりませぬ」


「ソルォン公…」


「それが亡き御母上であるミシル様に報いるたった一つの方法なのです。ピダム公、貴方さまは『王』の座に着かないと私にそうおっしゃられました。それならば、どうか御自身の選ばれた道を。陛下を支えこの神国に身を捧げる道を最後までお進み下さいますように。ソルォンはそう願い…最後まで貴方さまを信じております」


そう言い終わるとソルォンはすくっと立ち上がり、ピダムに一礼すると静かに部屋を出て行った。
一人残されたピダムは椅子に深く腰かけると長く息を吐き出してから瞑想した。


ソルォン公、忘れはしない。
『王』の座に昇らないと宣言したあの日の貴方の真っ直ぐな眸を。
最も近くで母を支え…今はその息子である私を支えてくれている。
ポジョンもいると言うのに…

それにしても、何故今頃ヨンチュンは『色供』の件を持ちだすのだ?
やはり、今朝のあれがいけなかったのであろうか?
ヨンチュンだけならああは言うまい。
チュンチュ…
あやつが一緒だったからな。
さて、お次はどう出るのか…
今頃それが陛下を悩ませているに違いないが…




***

本来なら早々にピダムを呼び寄せてゆっくりと盃を重ねながらの心温まる少し早めの夕の膳を囲んでいても可笑しくない時間であったが…
しんと鎮まり返った仁康殿には夕闇が迫り…
女王の心の闇模様が一層暗い影を落としているように思えた。

着替えもしないで一人執務室の椅子に座り込んで闇の中でただ一点を見詰めている女王の元に女官長が明かり取りの蝋燭に火を入れようと扉の外から声を掛けた。
二度と三度と「陛下…」と声を掛けたが一向に返事がない。
女官長は仕方なく無礼を承知で入室した。

そこで目にしたのは…
今にも闇に呑まれてしまいそうなか弱げな一人の女人の姿であった。

長年女王の世話をしてきた女官長はその姿に驚き、女王の直ぐ側まで近寄ると膝を折って女王の顔を下から覗くようにして声を掛けた。


「陛下…日も陰りました。そろそろ灯りを点してもよろしいでしょうか?陛下…?」


女王は女官長が持つ明かりを目にしてやっと正気を取り戻したようだった。
それでも力のない声で


「ああ、頼む」


とだけ言って微動だにしない、そんな女王に女官長が


「お着替えをお持ち致します。湯殿のご用意も出来ておりますが…如何されますか?」


「では、着替えだけ頼む。今宵は誰も部屋に入れるでない」


女官長は思わず「ピダム公もですか?」と口から出そうになったが…それを呑み込むと廊下に出て扉を閉めた。
するとそこへ、上大等ヨンチュン公がやって来たと取り次ぎの女官が急ぎ足でやって来た。


「今宵は誰も入れるなとの陛下のご命令です」


「しかし、上大等さまも火急の用件だからと…もうそこまで…」


女官の言葉が終わらぬ内に廊下の角を曲がったヨンチュンの紫色の衣が見えた。






「ヨンチュン公…火急の用とは何ですか?」


女王の冷やかな声が部屋に響き渡る。
だが、ヨンチュンは顔色も変えずに平然と


「はい、陛下…ピダム公の婚儀の件ですが…」


女王はヨンチュンを敵を見るような目で睨み付ける。


「私の娘、雪花(ソルファ)とはどうかと思いまして…それをお願いしに急ぎ参りました次第…」


「ピダムの婚儀だと?…何故、それが火急の用件になると言うのだ?」


「陛下…今やピダム公は陛下の御威光もあり、上大等たる私よりこの徐羅伐では押しも押されぬ権力者だと噂されております。さすればピダム公と懇意を結びたいと思う輩は多い筈。どこぞの誰にピダム公を持って行かれるか不安でなりませぬので…それでしたら私の婿として側に置いて置きたいとそう思うのが道理。その前に陛下の御裁可を頂きたく参上した次第…」


そう言うとヨンチュンは女王をじっと見詰めた。


「つまりそなたがピダムも…そしてこの私をもその手に納めたいと言うことか?そうなのか、ヨンチュン公?」


ヨンチュンは微かに口許を綻ばせると


「はい、いえ、陛下…そうではなく…」


額に皺を寄せながら女王が


「そうではなく…とはどう言うことだ、ヨンチュン公?」


「はい、陛下。ピダム公は私が婿に迎え…そして陛下は…陛下はチュンチュがその手に…いや、これは失言でした。申し訳ございません。陛下、ご無礼致しました事、お許し下さいますように…」


ヨンチュンはそう言って深々と頭を下げた。
女王はそれに激怒しながらも受け入れる他、道が無いことを知っていた。
何故なら既に罠は仕掛けられてしまったから。
上大等であるヨンチュンが便殿会議の場で『色供』の件を口に出した時点で、既に貴族たちへの根回しは済んでいると言うことだ。
ピダムに取って当面の政敵であるヨンチュンよりも実際にはその甥のチュンチュの方が問題であったが…
それでも政敵の娘を娶り、ヨンチュンが義父になることはピダムに取って決して悪いことではなかった。
況して妻を娶ったとはいえ、女王に対しての『色供』が出来なくなる訳でもなく。
ただピダムが女王だけの『男』ではなくなると言うことを意味していた。

一方の女王にしても実の姉チョンミョン公主の息子であり、甥であるチュンチュを『色供』に加えることは決して損になることではなかった。
神国の王族は『骨品制』と言う名実の元、近親婚を繰り返して来たのだから。

だがそれは建前だけの話であって…
実際にはピダムと二人で今まで築きあげてきた『連理(夫婦)』の関係が壊れることには違いなかった。
そしてこの先、己の腹の中に宿った子の父親を判別するのが困難になると言うことも意味していた。


私は…耐えられるだろうか?
ピダム以外の男にこの身を預け…抱かれることに…


血の気の引いた真っ白な顔が蝋燭の明かりの中でほんのりと浮かび上がる。
苦悩を宿した女王の顔(かんばせ)は壮絶なまでに美しく…
それをチラリと垣間見てしまったヨンチュンは心の中で甥チュンチュが狂おしい迄に女王を求める気持ちがこの時ようやっと理解出来たのだった。





続く。



☆最後までお読み頂き、ありがとーございましたm(__)m

今回のお題『小夜鳴鳥(サヨナキドリ)』ですが…
最初は『ナイチンゲール』の習性が気に入ったのでそれを描こうと思いました。
でも『ナイチンゲール』はちょっとトンピのお話の題名には合わないと思ったので、和名を調べたところ『小夜鳴鳥』又は『墓場鳥』と言うことが解りました!
しかーし、数日前にリンク先のMさんのところのSSの副題に同じ題名があって…ありゃりゃと思っていたところ…
Mさんにお伺いしたところご快諾して頂き、題名を『SS私のピダム 小夜鳴鳥』とすることが出来ました♪
Mさん、ありがとーございました
それでもやっぱり申し訳ないので…
ちょこっとだけ変えて『啼』→『鳴』にしてあります(^-^ゞ
感謝♪感謝です♪



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