SSS私のピダム 芙蓉花(プヨンファ)の祈り
皆さん、こんばんは~(^o^)/

ほんとは昨日『立春』の内にアップしたかったのですが…無理でした(^-^ゞ

この作品はこのblogに遊びに来て頂いているMさんに捧げたいと思います♪

詳しくはお話出来ませんがMさんは昨年から少し大変なことばかりが続いていらっしゃっていて…
とてもお辛いご様子でしたので…
何とか力になりたいなぁと思い…即効で書いて見ました(^-^ゞ
後から少し書き足すこともあるかもしれませんがお許し下さい。


宜しかったら続きをぽちっとしてお読みになって下さいね~(^з^)-☆




雲一つ無い冬凪の午後…
公主は蓮池の畔に佇み何度も溜め息をついていた。
門を守護する侍衛部の兵たちしか近くにいないと思われていたが…
西門の陰から、そんな公主の姿をじっと見詰めている男がいた。
真っ黒な鉢巻きを額に巻いて、同じく真っ黒な花郎の皮鎧を付け、眸も肌も髪の色さえも真っ黒な長身の美丈夫。
茶目っ気たっぷりなその男は公主を驚かそうとその機会を狙っていたのだが…
あまりの公主の落胆ぶりに流石の真っ黒男ピダムも声を掛けるのを躊躇していた。


公主さま、何か心配事がおありなんだろうか?
ここで俺が冗談言っても…きっと怒られるだけだろうし…
うーん、どうしたら良いのだろう?


腕を組んで頭を左右に捻りながらうんうん唸っているピダムをじっと見詰める男がいた。
空の色よりも青い装束に身を包んだ貴公子。
黄金のトゥリゲを左耳に垂らしたその男チュンチュはお節介男ピダムが大好きな叔母に何をしようとしているのか、渡り廊下の柱の陰から魅惑の微笑みを湛えながら観察していた。


暫くして、ピダムが内苑に向かって走り出したのを見届けるとチュンチュは蓮池の叔母の元へとゆっくりと歩み出した。


「叔母上」


そう呼ばれた公主はにっこり笑いながら声の主の方を振り返った。


「チュンチュや!」


今まで曇っていた顔が一瞬の内に晴れ晴れとした表情に変わる。


「叔母上、何か心配事でもおありなのですか?」


公主は目をくりくりさせながら


「何故だ?チュンチュ」


「先ほどから溜め息ばかりを吐かれていたので…」


公主は驚いた顔をして


「チュンチュや!何時から私を見ていたのだ?」


そう言われたチュンチュは平静を装ってはいたが…内心は『しまった!』と何時もの冷静さを欠いていた。


「あ、いえ、そう見えただけで…」


「本当なのか?」


「はい、叔母上。私が叔母上に嘘をつくとお思いですか?」


公主はチュンチュを愛しそうに見詰めると


「そうだな。お前は優しいからな」


「そうだ、これから私と内苑を歩きませんか?」


何時もの公主ならば愛する甥チュンチュの誘いを断ったりはしないだろうが、この日の公主の悩みは深く…そんな気分にはなれなかった。
実のところ公主はたった一人の男の来訪を待っていたのだった。


ピダム…何故、今日は会いに来ないんだ?
お前をずっと待っているのに…


「チュンチュ、今日は悪いがここでもう少し池を眺めていたい。だから一緒には行けない」


そう公主に誘いを断られたチュンチュは目尻を下げながらも口の端を微かに上げた。


まさか、ピダムを待っているのではありませんよね?叔母上。


心の中ではそう思いながらも口に出すのは憚られ…
目の上のたん瘤ピダムも視界から消えて何処かに行ってしまった。
そう考えると何やら急に面白味も無くなってしまったチュンチュは魅惑の微笑みを公主に向け暇乞いをすると蓮池を後にしたのだった。



それから半時ほど晴れ渡る冬の空を時々見上げては公主は一人ぼーっと池の畔に佇み、先ほどと同じように溜め息をついては顔を曇らせていた。
そこへ息を切らせながら真っ黒な男が手に何かを携えてやって来た。


「はぁ、はぁ、はぁ…公主さまぁ~」


待ち焦がれた男の心地好い声を耳にした公主の眸がキラリと輝く。
茶水晶の眸に写る真っ黒な男が手に携えて来たものをそっと目の前に差し出した。
微かに色付いた紅梅の一枝。
まだ春浅いこの時季にそれを見付けるのは大変だったろうに…
真っ黒な男はそれを宮廷の内苑中を走り廻って探して来たようだった。


「公主さま、どうぞ!」


「ピダム…ありがとう。何処で見付けて来たんだ?」


ピダムは頭をポリポリ掻いてはにかむように下を向いたが…
次の瞬間、真っ白な歯を見せながら太陽のように眩しい笑顔を公主に向けた。


「直ぐ、そこで見付けました。公主さまが喜んで下さって、俺は嬉しいです」


「ピダム…嘘をつくな。ここの近くに梅の木はないぞ!」


そう言ってピダムをたしなめつつもにっこり笑いながら…
公主はピダムから手渡された梅の蕾にそっと鼻を近付けて匂いを嗅いでみた。
ほんの少しだけ甘い香りがしたような気がした。
それは梅の蕾の香りではなく、ピダムを思う己の『恋心』なのかもしれないと秘かに思いながら…

数日前から父である真平王の心の蔵の病が芳しくないことを思うと心がその重荷で壊れてしまいそうで不安でならなかったのだ。
しかし、目の前にいる真っ黒な男にはそんな事は一言も話さずとも自然と自分の思いを和らげる不思議な術を心得ているようで…
いつの間にか真っ黒な男ピダムは公主の心の中心にいる大切な存在になっていたのだった。


「ピダム…手を握ってくれるか?」


「公主さま…」


そう返事をしながら差し出されたピダムの右手の中指にはどこぞの枝で傷付けられたのかうっすらと血が滲んでいた。


「ピダム…血が出ているではないか」


「えっ、ああ、気が付きませんでした」


急いで血を舐め取ろうとしたピダムから指を奪い取るようにして公主はそれをぺろりと舐めた。
己の指を舐める公主の突然の行為に驚きながらもピダムは公主の柔らかな舌の感触に背中をぞくりと波立たせ…
ピダムの黒曜石の眸が段々と熱っぽくなって行くのを感じた公主は指を舐めるのを止めた。
何となく気恥ずかしくなった二人は揃って「ゴホン、ゴホン」と小さな咳払いをして、その場の雰囲気を変えようとしたが…
互いの咳払いのあまりのわざとらしさに…最後にはクスクスと笑いが溢れ出す。


ふふふふふっ…

あははははっ…


再び公主が手を差し出すとピダムがそれをそっと握り…見詰め合う二人。


「ピダム…お前は温かいな…」


「公主さま…貴女も温かいですよ!」


ピダム…
繋いだ指と指の間から『恋心』が逃げ出さないように…もっとしっかりと握り返そうか?
冬の木漏れ日のようなお前の笑顔が消えないように…しっかりとこの眸に焼き付けて置こう。


公主さま…
紅梅の蕾よりも赤い公主さまの唇が目の前にある。ほんの少しだけ顔を近付いてそれに触れてしまおうか?
紅梅の花の香りよりも尚甘い公主さまを抱き締めてしまおうか… ほんの少しだけ腕を伸ばして…


蓮池の濁った水の下では春を待つ芙蓉花が息を潜めて二人の想いに耳を傾けている。
死して再び甦る…永遠の花、芙蓉花。
初々しい恋人たちの『恋』が永遠であるようにと…
花の精霊たちが池の底からひっそりと祈りを捧げていた。





☆最後までお読み下さり、ありがとーございましたm(__)m

Mさん、ファイティ~ン

冬だけど池が凍ってなくて、ごめんなさい(^-^ゞ
そこは見逃して下さいね~

芙蓉花(プヨンファ)とは蓮の花のことです♪



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2013/02/06(Wed) 01:01

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