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SS私のピダム 司量部令の一日 その参
皆さん、こんばんは~ヽ(^。^)ノ

今日も風が強い一日でしたね~

桜の花もすっかり散ってしまいましたが…その変わりに青葉がすくすくと伸びて目に鮮やかな緑色になってます

ギル君のドラマ出演も決まり…明日からはnew gil-storyがopenしますね~

本格的に俳優活動が開始されて嬉しい限りです♪

さてさて今宵は中々更新出来ずにいた『司量部令の一日』その参をUP致します。

続きをポチっとしてお読みになって下さいね~~(^_-)-☆





お付きの女官たちが時折小声で何やらひそひそと楽し気に話す以外は足音さえも聞こえず、しんと静まり返っている仁康殿。
時だけが普段と同じように刻々と過ぎ去って行く。
居所である執務室で仕事に精を出している女王。
その机の上に積み上げられていた書簡は残すところ後二つ三つとなっていた。
午後の着替えをしてからピダムと約束した場所。
毎年恒例のように二人で桜を愛でる場所。
内苑と名はついてはいるが…別名『桜波苑』と呼ばれている月半城の外周に近い北の端にある御苑まで歩いて行くことを考えると半時以上は余裕を持たなければならない。

今日だけは遅れたくない…いや、遅れる訳には行かぬ。
多忙極まるピダムの為に…
このまま何事もなく仕事を終わらせたい。

女王は女王の御位に着いたその年…
ピダムと約束した花見の時間に大幅に遅れてしまい、春の冷たい雨の降り頻る中、ピダムを数刻の間待たせてしまったことを思い起こしていた。
『遅れる』と言う伝言を女官に伝えに行かせたのに…
司量部令になったばかりのピダムは自分の気持ちを上手く制御することが出来ずに意地を張って傘も差さずに雨の中に一人佇み続けていた。
ようやっと仕事を終わらせて急ぎそこに駆け付けると…
ピダムは一言の愚痴も溢さず、私の顔を見るなり唯黙って優しく、だがとても淋しそうに微笑んだのだった。
そんなピダムがこの上もなく愛しく思えたのと同時に心の底から申し訳なくも思い…
私は後先考えずに侍衛府令や女官たちの目の前でお前をこの胸に抱いたのだった、お前のその凍えた心を温める為に。
そしてその後、雨に打たれ続けて冷えきったお前の身体を温める為に湯殿へと向かったのだったな…
ピダム…そこで私はお前と。

懐かしくも甘酸っぱい思い出に浸っていた女王の顔が気恥ずかしさからか、いつの間にか真っ赤に染まっていた。
胸の鼓動がとくとくと高鳴り、波打つ血潮の音が辺りに響くほどに大きくなった。
女王は上気した頬に両手を充てると溜め息交じりの息を吐き出して気持ちを落ち着けようと努めた。
だが、思い出の中のあのピダムの美しくも哀しげな笑顔が脳裏に焼き付いて離れずにいる。
女王は書簡を手にしたまま、思考が途切れたようにほんの少しの間動きを止めた。




**

司量部の面々で練った対百済戦の為の作戦行動を書き記した書簡を手にピダムは上将軍ユシンの待つ兵部へと向かっていた。
太陽はもうすぐ中天に達しようとしている。
朝のひんやりとした空気は日の光によって温められた空気に変わり、渡り廊下を颯爽と歩いて行たピダムは何やら硬い殻を突き破り芽を出したばかりの若葉のように解放された気分になった。
『暖かな春の空気は人を狂わせる。何故か解らぬが心が軽く…だがその解放感は軈て不安にも繋がって行く』
宿敵ウィジャも雪に閉ざされた白銀の世界では暖かな土の下にてその身を長らえ…雪解けと共に一気に地中から飛び出す羽虫のように、この神国の地に足を踏み入れ、民らの流す血の香りに酔いしれようと言うのか?
最も美しい花の季節を謳歌せずに…
戦いを仕掛けるなど不粋極まりない。
後宮に囲う幾人もの女人の間をふらふらと飛び回る女狂いの隣国の太子は物欲ばかりで自然の移り行く姿や民の都合(田植えの時期)など関係ないと見ゆる。
ピダムは珍しく腹立たしい気分になっていた。
そうでなくてもこの後、神国一の堅物・巌の大将軍ユシンと会わなければならぬのに…


兵部の討議部屋に入るとユシンが大きな机の上座に一人で座っていた。
ピダムは軽く会釈をしながら


「ユシン公、お待たせして申し訳ない」


と儀礼上の挨拶をするとユシンもまた


「いや、まだ来たばかりだ、ピダム公。どうぞお座りになって下さい」


と言って顔色一つ変えずにピダムに着席を勧める。
椅子にすっと腰を下ろしたピダムが書簡を手渡すとそれを紐解いて目を通し始めるユシン。
ユシンがそれを読み終えるのを只側でじっと待つピダム。

神国の双璧。
女王の左右の腕にあたるピダムとユシン。
風貌から性格まで有りとあらゆる点で水と油のように相反している二人であったが只一つ女王を愛し守ろうと言う点だけは共通していた。
その心さえあれば…
女王の為に己の信念を曲げ目の前にいる政敵の言うがままに戦い神国を守り抜く。
そう考えるとユシンだけが損をしているようにも思われがちだがピダムの考案した作戦を遂行することで他国との戦いに勝利し民の称賛を受けるのは他でもないユシンでありピダムではない。
その証拠にユシンが戦いから帰還する度にその名声は鰻登りに上がり、ユシンが率いる神国の軍を今では『ユシン軍』と呼ぶ者も多かった。

ピダムは決して政治的にユシンの前に出ようとはせずに女王の心の拠り所としての自分の立場を守る為に尽力していると言っても良かった。
戦場に出れば恐らくは剣神と言われるほどの腕を奮い、亡き母ミシル譲りのカリスマ性を発揮するであろうピダム。
政治的にもユシンを窮地に追い込む術をその手中に握っているに違いないが…
敢えてそれを表に出そうとはせず、ひたすら二番手に撤しているのは一重に女王へ対する忠誠と愛情故。
『相争ってはならぬ。互いを尊重せよ!』
女王の放つ言葉はピダムにとっては佛が弟子に語り聞かせる説法のように耳に心に…そして身体の奥底まで染み渡っていた。

ピダムの持つ情報網と洞察力で練り上げられた作戦をユシンの持つ軍権と統率力を使って実行する。
二人の暗黙の了解の内に遂行される神国の軍事作戦、その事前の打ち合わせが将にここで行われようとしていた。

書簡を読み終えたユシンがピダムに幾つかの質問を投げ掛ける。


「ピダム公、つまりはこれは隣国百済の太子ウィジャが独山城を奪う為に玉門谷に兵を潜伏させようとしている、そう言うことですか?」


「はい」


「これは確かな情報ですか?」


「はい、ですが百済が何時そこに兵を送ってくるのか、それは未だに解らぬのです。ですから…」


ユシンはピダムの顔をじっと見詰めながら


「だから、哨戒の為の兵を配置していち早くそれを掴み…奇襲作戦に出ようと…」


「はい、それが最も効果的に…兵を失わずに…戦いを収拾出来る方法かと…」


そう言って片方の口の端を上げてピダムが微笑むとユシンも頷きながら微かに笑っている。
女王の愛情を巡っては相争う二人ではあったが…神国の勝利の為には手を取り合う二人でもあった。
ユシンは黙って首を縦に降ると


「承知した、ピダム公。心して事に当たろう…」


「ユシン公、忝ない」


とユシンに礼を言うピダムに


「ところでピダム公、昼餉はお済みですか?もしお済みなら茶など一服如何でしょう?」


ユシンはピダムがこの後女王と花見の約束をしていることなど露知らず、好意からの申し出であったが…
ピダムにしてみればユシンが好意でやっているのか、はたまた悪意があるのかは全く解らなかった。
事を穏便に納め一刻も早くここから退出したいピダムは低い声音で


「ではお茶だけ頂きましょう」


「ああ、それは良かった。ピダム公がお茶好きだと伺って唐から取り寄せた極上の茶葉を用意してあります。是非味わって行って下さい」


上機嫌なユシンはにこにこしながらそう言うと手を叩いて女官に茶の準備を命じるのだった。




**

軽めの昼餉を早目に済ませた女王は用意された空色の衣に着替えると鏡の前に座り、じっと己の顔を見詰めた。
カチェを外すと首の負担が無くなり身軽になった分、心も軽くなったような気になっていた。
おまけに顔色さえも明るく見える。
女官が手早く髪を緩やかに結い上げると小さな花飾りの付いた簪を幾つか髪に差し入れ、それと揃いの耳飾りに付け替えた。
化粧の幾分剥げ落ちた顔に白粉を叩いて軽く紅を付け足す。
支度の済んだ女王は立ち上がって姿鏡の前まで来ると何時もの自分でない姿にほんの少しだけ戸惑いを覚えながらも

ピダムはこの姿を見て喜んでくれるだろうか?
宮殿内にいるのに正装を解いた私を皆は何と思うだろうか?
それより今朝もたらされた情報を処理する為にピダムは今頃何れ程の気苦労をしているのだろうか?

等と眉間に皺を寄せながら色々な想いを巡らせている。
女王の不安気な様子を直ぐ側で見ていた女官長が心配そうに声を掛けた。


「陛下、あの陛下?」


「ん…ああ、どうかしたのか?」


その声ではっと我に返った女王。
女官長はゆっくりと優しく


「はい、陛下、とてもお似合いで御座います。それにその空色の衣が薄紅色の桜の花に一層映えること、間違い御座いません」


そう女官長に自信を持って言われた女王はにっこりと微笑むと


「そうか…そなたがそう申すのなら間違いなかろう…」


「はい、陛下…」


「他の準備も整っているのか?」


「はい、既に運び終えて有ります」


「そうか…ではそろそろ参ろうか!」


そう言うと侍衛府令アルチョンと女官らを従えてピダムとの約束の場所に向かっていそいそと歩き始める女王。
一方のピダムは珍しく上機嫌で話すユシンから未だに解放されずに兵部の討議部屋にいた。。
一刻も早く女王との花見の場所に行きたいと募る気持ちを抑えて心の内を決して表に出さずに目の前にいるユシンの話に熱心に聞き入るピダムは流石に『凍れる美貌の司量部令』と冠されるだけの強靭な精神力を持つ男であった。
だがその男にも我慢の限界が近付きつつあった。
ピダムが何時ユシンの話の腰を折ろうか考え始めた頃、ピダムに助け船を出そうと兵部の討議部屋にソルォン公がやって来たのだった。


「ユシン公、失礼致します」


「これはソルォン公、如何致しましたか?」


ソルォン公はゆっくりと頭を上げると静かな眸でユシンをじっと見ながら


「はい、急ぎ司量部令にご相談したき別件が出来ました故、公をお迎えに参りました」


それを聞いたユシンは一瞬苦虫を潰したような顔をしたが直ぐにいつもの顔に戻ると


「ああ、構わぬ。打ち合わせは済んだ故、公をお連れ申すが良い」


「はい、ユシン公。ありがとう御座います」


そう言って深々と頭を下げるソルォン。
ソルォンに心の中で感謝しながらピダムはすっと椅子から立ち上がるとユシンに向かって


「ではユシン公、良しなに…」


「ああ、承知した」


と言ってユシンも立ち上がった。
名残惜しそうな顔をしながらも兵部の代表としてピダムとソルォンを送り出すユシン。
一人部屋に残されたユシンは茶器に注がれた二杯目のお茶を旨そうに啜った。

戦いに出ればこんなに美味い茶にはありつけないだろう。
そればかりか必ず生きて帰れる保証がある訳ではない。
気を引き締めて事に当たらぬば…

と、この先起こるであろう戦いを考えると幾分憂鬱な気分にもなったユシンであったが気を取り直して底の方に残った緑茶を飲み干す為に茶器を再び口許に充てた。
ごくりと音を立てて喉を通過して行く極上の茶の味はユシンの不安を取り去るほどに爽やかな春の味がした。
『やはり唐の茶は美味いな』
茶を飲み終えたユシンは百済侵攻を阻む為の哨戒作戦を実行すべく、使いの者に兵部の諸将を集める命令を下した。



**

『桜波苑』の桜たちは風に吹かれて…
まるで浜辺に打ちつけられる波のようにざわざわとさざめきたっていた。
その音がまだ来ぬ『花見』の主役たちの登場を待つ聴衆のようにひそひそと囁き合っているようにも聴こえて…
風によって梢から離された花弁が土の上に敷かれた紅い毛氈の上にはらはらと舞い落ちる。
薄紅色の波間に漂う小船のように二羽の雀が仲良く枝からぱっと羽ばたいた。
雀たちが飛んで行った空はどこまでも見渡す限り青く。
その青空に輝く太陽だけが今を盛りに美しく咲き誇る桜たちを見詰めている。






続く





☆最後までお読み下さり、ありがとうございました<(_ _)>
その四に続きます♪
次回は『花見』編に突入しま~す(*^^)v











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