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風の歌声

ピダム&男前を愛する管理人の萌えブログです♪

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SS私のピダム 赤い月

 18, 2018 08:30
8月に入ってからも毎日暑い日が続いています。
皆さん、お元気でいらっしゃいますか?
管理人、あまりの暑さに何もする気にもなれず…
あっという間に月の半ばとなってしまいました~(^^ゞ

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何も更新しないのはあまりに寂しいので…
今月中に何とか一つ作品を仕上げようと…
亀の歩みの如く書いた作品が今回の『赤い月』です♪
ずーっと昔に書いたお話に加筆をしたので…
もしかしたら、他の作品で使った言い回しが有るかと思いますが…
そこは多目に見て頂けると助かりまーす(*^^*)

※アップするのを迷っていたら…昨日は爽やかなお天気となり、前書きを書き直すかどうか迷いましたが…そのままにします(笑)


酷く疲れて動きたくない。
何故己の想いは上手く相手に伝わらないのだろう?
唯、誉めて欲しくて…
唯、手を繋いでいて欲しかっただけなのに…

あの夜、甘える俺の手を師匠が振り払ったあの夜から…
俺の心の奥底にどす黒い膿のような何かが少しずつ溜まり始めて…
何時しか心の壁を壊すほどになって行った。

ある時、俺は夜空に輝く月を手に持った刀で真っ二つに切り裂いて見た。
するとすっぱりと斬れた鋭い切り口から真っ赤な鮮血がどろどろと流れ出でて夜空を真紅に染め上げた。
ああ、何と美しく…何と凄惨な光景なんだろう。
目が離せぬ程の見事な光景を目の当たりにしているのにあっという間にその高揚感は何処かへと消え去って何一つ変わらぬ俺だけがその場に残される。
苦しくて苦しくて苦しくて…
高みに向かって手を延ばす…
だがその手を握る者はなく…
助けを求めても誰も俺の手を握り返してはくれない。
そんな人生は寂しく、そして虚しい。
俺は人恋しさに憧れた。
そうして俺は考えた。
誰も己の手を握ってくれないのならば、手を握るように無理やり従わせるか、或いは諦めるしかない。
恐怖によって手に入れた見せ掛けの従順さは到底俺を満足させることには至らず…
結局俺は人生に何の希望も見出だせないまま生きる他なかった。
『絶望』から生まれる『孤独』と言う二文字は死が訪れる時まで俺の中から消え去ることはない。

ああ、信じるものがないと言うことは何と心許ないのだろう?
誰かを信じ守り抜く。
そう心の底から思える誰かがいない人生とは何と虚しいのだろう?

ピダムは夢の中で長い手足を必死に動かしながら己の中に巣食う『虚無』と言う大き過ぎる化け物と相対していた。


草木も眠る丑三つ時…
傍らで眠るピダムが息苦し気に唸っている声に気付き目が覚めた女王。
むくりと起き上がって灯火を手元に引き寄せピダムの様子を伺うとその額には大粒の汗が噴き出し頬は紅色に染まっている。
右手を伸ばしてピダムの額に掌を充てるとかなり熱い。
丈夫なピダムが熱を出すなんて珍しいこともあるものだと、不謹慎ながら女王は口角を上げてふっと笑った。
数年前、初めて『色供』に上がって以来、ピダムは色供の最中に失態という失態を犯したこともなければ寝言とおぼしき唸り声の一つも上げたことはなかったのだ。
しかし今宵は違った。
高熱に魘され悪夢を見ているようにピダムは酷く歪んだ表情で左右に首を振りながら『うんうん』と唸っている。
女王は苦しげなピダムを一刻も早く夢の中から救い出そうとゆさゆさと身体を揺さぶって見た。

「ピダム、ピダム…」

するとその名を呼んだ次の瞬間…眠っている筈のピダムが突然女王の右腕をガシッと掴んだ。

「あっ、痛!」

あまりに強い力で腕を掴まれた女王は思わず大きな声を上げていた。
その声に驚きビクリとして目を覚ましたピダム。
深淵の眸は愁いを秘め、手足は震え、まるで幼子(おさなご)のように弱々しいピダムが其処にいた。

「どうかしたのか?ピダム…」

「行かないで…。お願い。俺を一人にしないで…」

か細い声で、そう必死に訴えるピダムの様子が尋常でないことに気付いた女王。

「どうしたんだ、ピダム?私はずっとこうしてお前の側にいる」

そう言ってピダムの背中に両腕を廻してそっと抱き締めてから

「私は何処にも行かない。ずっとお前の側にいる。だから安心して眠れ、ピダム」

「うん」

そう頷いたピダムの背中を女王は優しくトントンと叩きながら…
我が子をあやし諭す母親のようにピダムを再び眠りの世界へと誘う。

トントントン…トントントン…と。

数分の後…
漸く落ち着きを取り戻したピダムの寝息が何時ものように『すやすやすや』と微かに聴こえて来ると女王はピダムの頭を抱き抱えるようにして寝台の上にそっと寝かせるのだった。
それからなるべく物音を立てないように上衣に袖を通した女王はしずしずと扉の前まで来ると外に控える女官に冷たい水と布を持って来るよう命じ、足音を殺して部屋の中央にある卓まで戻ると椅子に座りホッと息を吐いた。
眠気眼を擦りながらぼんやりと宙を見詰めると女王は先程の尋常でないピダムの様子を思い起こして見るのだった。

ピダムは如何したのであろうか?
あんな頼り無げで…幼子のようなピダムを見たのは初めてだ。
一体何の夢を見ていたんだ?
悪夢を見ていたとしか思えないのだが…

女官が持って来た氷の浮かんだ水に布を浸しピダムの額に充てた女王はピダムの看病をしながら夜を明かすつもりだった。
だが日中の激務からか…
いつの間にか眠気に負けてしまった女王はピダムの眠る寝台の端に突っ伏して眠り込んでしまっていた。

その夜、天空には奇しくも満月が煌々と輝いていた。
東の地平線近くの低い位置に顔を出した月は大きく丸く…そして何故か赤く見えた。
恰も百鬼夜行をすると言う魑魅魍魎どもが悪事の限りを尽くし、この世の生き歳生けるものたち全てを惨殺した後、その返り血を浴びせられたかのように月は異様な赤みを帯びていた。

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***

翌早朝…
微かな光が仁康殿の軒先に届く時分にピダムは未だに重い瞼を何度かパチパチさせると目を覚ました。
水が飲みたい。
そう思って身体を起こそうとすると腹の辺りに重みを感じ…
見るとそこには麗しの女王陛下がすやすやと寝息を立てて気持ち良さそうに眠っていた。

陛下?
何故そんな所で寝ていらっしゃるのですか?

ピダムは首を捻りながらあれこれと思案して見た。
だが全く持って理由が解らず…
暫くぼうっとしていると女王の頭がぐらぐらと左右に振れ始め…
軈て寝惚け眼で顔を上げた女王に『ピダム…』と名を呼ばれたピダムは反射的に『はい、陛下』と返事をしていた。
ピダムは嬉しかった。
己を気遣い、起き抜け一番に女王が己の名を呼んでくれたことが…。
理由は未だに解らなかったが、何らかの理由で女王が夜通し己を看病してくれた事は明白だった。

「陛下、お早うございます」

「ピダム、お早う」

そう言って何時ものようににっこりと微笑む女王。
釣られてピダムもにっこりと微笑んだ。

「気分はどうだ?」

「はい、陛下。喉が渇いているだけで頗る元気です。ですが…あの…」

ピダムの言葉を遮るように女王は右手を伸ばしてピダムの額に掌を充てた。

「どれどれ…ああ、熱は下がったようだな」

上目遣いで女王を見上げ何とも言えない不思議な表情をするピダム

「陛下?私は熱を出していたのですか?」

「ああ、そうだ。昨晩とても苦しそうに唸っていたぞ!」

「唸っていた?それは本当ですか?」

「ああ、本当だ。何も覚えていないのか、ピダム?」

「はい、陛下…それがその昨晩の記憶が全く残っていないのです!」

ピダムは己の額にあった女王の手を握り締めると、その美しく澄んだ茶水晶色の眸をじっと見詰めた。
すると真面目な面持ちの女王がピダムの顔を覗き込むようにして顔を近付け

「ピダム、お前、昨晩もそうやって私の手を握って…『行かないで』…と、まるで幼子のように懇願したのだぞ!」

「えっ?私が…」

「そうだ、お前がそうしたのだ。ピダム…。そなた、私に言えぬ心配事を抱えているのではないのか?」

女王にそう問われたピダムは暫し眉間に皺を寄せながら原因を探って見るのだった。
思い当たることと言えば…亡き師匠の命日だった。
数日前から気にはなっていたのだが…
そのことで幼い頃のトラウマが夢となって表れたのかもしれない。
だがこの話を口にすれば師匠の死の真相を女王に暴露される可能性もある。
ピダムは暫し頭の中で思案を巡らせ…

「陛下…この件に付きましては、今宵必ずお話致します故。今は水を所望しても宜しいでしょうか?喉が乾いてしまって…」

一旦、そう話を誤魔化して置いて、何時と変わらず片方の口の端を上げてにっこりと微笑んで見せるのだった。
赤い月の余韻は未だ消えず…
ピダムの心に巣食う深い闇を照らし続けている。

女王は微笑み返すとすくっと立ち上がり…
卓の上に置いてあった茶器をピダムに手渡した。
水を美味しそうに飲むピダムを見詰める女王の眸は不安気にゆらゆらと揺れている。

夫婦間での隠し事は少ない方が良い。
だが…聞いてしまって取り返しが着かぬことなら、寧ろ隠して置いた方が良い。
ピダム…お前の不安が私にも伝わって来るぞ。
このまま聞かぬことがお前の為なら、私はこれ以上何も聞くまい。

「水は美味いか、ピダム」

「はい、陛下」

顔を上げたピダムをじっと見ながら

「それは良かった。して、ピダム…今宵の伽はせずとも良い。たまには宿下がりをして数日休むがよい」

えっと小さく声を出したピダムは目を見張りながら

「ですが陛下…」

「ですが、なんだ、ピダム?朕の命令が聞けぬと申すのか?」

「はっ、いえ、陛下」

困惑するピダムの元に歩み寄ると女王はピダムの大きな手を両手で優しく握って

「私はお前を信じている。信じているから、お前の全てを知ろうとは思わない。時には自由に過ごせ、ピダム。丈夫なお前が発熱したのだ。ゆっくり心身を休めろと言う啓示だろう」

「陛下…」

「良いな、ピダム。充分に休養した後、再び、朕の側に戻って、今までと同じように仕えて欲しい。駄目か、ピダム?」

「御意」

そう言って深々と頭を垂れたピダム。
ゆっくりと目を閉じると亡き師匠ムンノとの様々な思い出が走馬灯のように駆け巡る。
思わず苦虫を潰したような表情になったピダムだったが…

暫くして普段の沈着冷静さを取り戻したピダムは己の置かれた今の状況を分析し始めた。

陛下は今も変わらず私を信じて下さっている。
こんな私を必要として下さっている。
ああ、心が震える。
目頭が熱くなって今にも涙が溢れそうになる。
私…いや、俺は…俺は…
己を信じてくれる者の為に生きたい。
師匠の死はいつかは乗り越えねばならぬ試練。
陛下の御為に…いや、俺自身の為にも…
今こそ真実と向き合うべき時なのだ!

決意を新にするピダム。

神国の大地をあまねく照らす光…
至高の女人がピダムに寄せる絶対の信頼が呪われし赤い月の呪縛から孤独な男の心を解き放つ…
眩くも限りなく優しい光に包まれた男の顔はこの上なく安らかだった。


ピダム、信じている。
心の整理が着いたら、わたくしの元へ…
待っているぞ。

はい、陛下…
師匠の墓参りを済ませた後…
再び貴女の元に…






☆最後までお読み下さり、ありがとうございましたm(__)m
ピダムはムンノを埋葬した後、再び、あの場所を訪れたのでしょうか?
ふと、そんなことを思って書き出した作品です。




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