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SS私のピダム 葵花向日(きかこうじつ) その参 

2018, 05. 01 (Tue) 00:40

今回のお話の中のピダムのイメージはこんな感じ↓
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しなやかで力強い野生馬のよう。
『黒馬』って渾名を贈りたいと思いま~す

『太陽を抱く月』↓
2012年に大ヒットしたMBCの歴史ファンタジードラマ。
今回のお話はこのドラマを観ている時に書いたのだと思われます。
何故なら、皇太子時代のフォンとヨヌが宮殿で一緒に見た人形劇と…

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数年後、大人になって再会してから、街中でやはり人形劇を一緒に見た、このエピソードをモチーフにしてますからね~
懐かしいですよね!あれから5年ほどの歳月が過ぎてしまいました。

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そして、このお話も数年を経て、やっと完結します♪




それから数日後のある宵の口に女王とピダムはアルチョンが私宅に帰ったことを確認すると用意してあった木綿の服に着替えて、徐羅伐の街に繰り出そうとしていた。
暗闇にまみれて宮殿の外に出るとピダムは神妙な面持ちで女王にこう注意を促した。

「陛下、本来ならばこんなことは絶対に許されることではありません。一国の君主が黙って宮外に出られるなど…。私から絶対に離れないで下さい。それと…ここからは奥方さまと呼ばせて頂きます」

ピダムがそう言うと女王は

「ピダム…しかし、この格好で奥方さまは可笑しくないか?」

ピダムは自分と女王の姿を見て、頷くと

「はい、では、何とお呼びすれば宜しいでしょう?」

女王はにっこり笑うと

「そうだなぁ、…トンマンと呼ぶのはどうだ?」

ピダムは嬉しいような悲しいような何とも言えない表情を浮かべながら

「しかし、陛下…それは禁忌と…」

遮るように女王が

「駄目か?この姿で市井に出たのだから、今は只の一人の女であって王ではない。だからそう呼んでくれぬか」

ピダムは女王の名を呼べることが本当は嬉しかった。
まだ女王が公主だった頃、何にも縛られることなく、自由に宮殿を歩き回っていた…あの何にも束縛されなかった頃に戻れるようで…

「では、陛下…」

そう言うとピダムはすうっと深く息を吸い込んでから

「トン、マン…」

と囁くようにその名を口にした。

「ピダム、小さくて聞こえない」

「えっ、はい、すみません、陛下…」

ピダムは女王をその黒曜石の眸でじっと見詰めると優しい声音で

「トンマン…。トンマナ…」

「ああ、何だ…ピダム」

女王は久しぶりにその名で呼ばれたのが嬉しくてはにかむように笑っている。
そのぎごちない表情が何とも可笑しくてピダムがクスリと笑うと女王が頬を膨らませてプイっと横を向いた。
今度はピダムが伐の悪そうな表情に変わり…
二人は再び顔を見合わせると大声で笑い出した。

あは、はははははっ

ふふっ、あーははははははっ

「やはり、身軽な格好になると心も軽くなるものだな!ピダム、お前のそんな顔は久しぶりに見たぞ。こんなことならもっと早くにこうするのだった」

そう女王が残念がったが、ピダムは

「久しぶりだから良いのです。貴女さまはこの神国を統べる尊い御位にあられる御方なのですから」

そう嗜まれた女王は悔しくなって

「ピダム、今は貴女さまではない。私は唯のトンマンだ!」

ピダムは観念した顔で「はいはい」と口だけ動かしてから

「それで一体何処にいらっしゃるおつもりなんですか?」

と女王の意向を聞くと

「そうだな…先ずは芬皇寺に行って…それから寺のすぐ側にある見世物小屋に行きたい」

「芬皇寺の側の見世物小屋に?」

今だ自分を女王扱いするピダムに嫌気がさしたのか、業を煮やした女王はこう命を下した。

「うん、そうだ。見世物小屋に行く。それと、ピダム、先ほども言ったが、この姿に丁寧な言葉使いは合わない。今すぐパンマル(ぞんざいな言葉)で話せ!」

そう言うと口を尖らせ、きっとピダムを睨むのだった。

「ご命令とあらば…従います」

ピダムがそう言うと女王は大きく頭を縦に振って頷いた。

「じゃあ、俺に付いて来て下さいね!」

ピダムはぎごちなくそう言うと女王に背中を向けた。

「ピダム、待て。少しだけ待ってくれ!」

女王は大股でずかずかと歩いてピダムに追いつくとピダムの左腕をガシッと掴んで

「ピダム、何度も言うが、私に気を使うな」

振り向いたピダムは困惑した顔をしながら

「ですが…その…しかし…」

「出逢った頃のお前に『しかし』なんて言葉は無かったぞ。違うか?」

「はい、確かに…」

ピダムがそう返事をすると二人は昔のように肩を並べて歩き始めた。
暫く行くと朱雀大路からも芬皇寺の石塔の天辺がチラチラと見え始め…
女王はふっと、その石塔を作った頃のことを思い出した。

「ピダム…あの塔を建てたのがついこの前のことに思える」

「はい…時が経つのは本当に早い。中にお入りに…」

「ピダム、またお前は!」

「その、申し訳ありません」

ピダムは頭をポリポリ掻きながら舌を出している。

「やはり今の私にパンマルは無理のようです」

「仕方がないなぁ、だがなるべくで良いから、私に気をつかうな」

「努力します」

そんな会話をする内に見世物小屋の前に着いていた。
道の向こう側で数名の客引きが今評判の人形劇の最終公演の呼び込みをしている。

「まさか、この人形劇をご覧になりたかったのですか?」

女王は大きく頷いて

「ああ、そうだ。悪いか?ピダム」

「いいえ、唯…」

「唯…何だ?」

ピダムは片方の口角を上げるとニヤリと笑いながら

「まだまだ貴女さまにもお可愛らしい所が残っていたのですね!」

それを聞いたトンマンは口を尖らせ頬を膨らましながら

「仕方なかろう、ピダム。一国の主(あるじ)ともなれば己の本心を隠して生きねばならぬ。お可愛らしい所など誰にも見せられる訳がないではないか」

「確かに仰る通り。では、観るのは止めますか?」

「いや、観る。折角ここまで来たのだ。観るに決まっているだろう」

そう言って女王はピダムの手を握ると見世物小屋の中に向かって一目散に走り出す。
わざと引っ張られるようにして女王の後ろを走るピダム。

トンマナ…
お前の望むことは全て叶えてやりたい。
それはあの頃も今も変わることはない。
俺の人生にお前は不可欠な存在だから。
ありがとうと言ってくれた初めての人だから。
殻を破ったばかりの雛が初めて見た者を親と思うように…
向日葵が太陽を追って向きを変えるように…
俺はずっとお前に従って生きていく。
それが俺にとっての幸せなんだとお前は気付いているのだろうか?

ピダムがよもや過ぎ去りし遠き日々に想いを馳せているなど露知らずの女王は後ろを振り返って無邪気に微笑んだ。
柵から解放された女王の笑顔を見るのはピダムにとって至上の喜びであり、握った掌から伝わる温もりが恰も己の想いへ対する答えのようにピダムの心はそれだけで満たされて行く。

ああ、幸せだ。
俺の想いなど知らずとも構わない。
お前と共に歩むこの人生が、その全てが愛しくて堪らないから。
いつか俺に死が訪れる、その瞬間まで、俺はお前を護り生きていく。
トンマン、ナエ、トンマナ…
今は、この瞬間が永遠に続くようにと…
唯、それだけを願う。


二人が着席すると直ぐに演目が始まった。
『月の雫』と言う何処の国の皇子と天女の恋物語だ。
仲良く並んでそれを観賞する二人。
蝋燭の焔に写し出された二人の影は片時も離れることなく、ゆらゆらと楽し気に揺れていた。










※葵花向日(きかこうじつ)
「ひまわりの花、日に向かう」
夏の点景を、熱い太陽に向かって咲き誇るひまわりの姿に託した言葉。

※『トンマン、ナエ、トンマナ』
善徳女王ファン、ピダムファンなら誰でも知ってる最終回のピダムの台詞。
これを楽しいお話で使って見たかったのでした。
ですが今回はピダムの心の中での台詞なので…
いつか口に出してこの台詞を言って欲しいと思っています(*^^*)

☆しかし…40過ぎての人形劇見物ってどうよ('_'?)
闇にまみれての御忍びだからまだ良いけれど…
昼間だったら高身長の美男美女だからさぞ目立つでしょうね!
人形劇より人だかりが出来ちゃいそう(笑)

自分で書いておいて、辛口感想を書いてしまう管理人。
ピダムがOK出してるから、良いってことに致しましょう(^o^)v


これからも少しずつですが更新して行こうと思っております。
是非またお立ち寄り下さい(^.^)(-.-)(__)







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コメント

のんのん

遅ればせながら…

2015年の年明けとともに善徳女王を見始めて、一ヶ月後には最終回を見て廃人になったというブームに乗り遅れた善徳女王マニアです。
以前は2次創作はなんとなく避けていたのですが、2ヶ月ほど前からハマってしまいました。
多分全ての話を読み終わったと思うので、最新のこのページにコメント致します。
テヤンさんの描く幸せなトンマンとピダムに癒されてたり、ドラマに沿ったSSを読んで「そうそう!私もそう言う気持ち(解釈)なのっ!」とスッキリしたり… とにかく夢中でテヤンさんの世界を楽しませて頂きました。
私もテヤンさんと同じく司量部令ピダムのクールで寂しげな彼が大好物なので、毎話ドキドキですよ。
トンマンのピダムへの甘え方が可愛くて、「あー、昔私もこうすりゃ良かったのか!」なんてアホなこと考えちゃったりして(^^)

今だに2ちゃんねるでもカキコミが続くという不思議ドラマの善徳女王
2次創作のまだまだ需要あります!
まだ終わっていない話の続きがとっても気になりますので、テヤンさん楽しみにしてますよー!
長文失礼いたしましたm(_ _)m

2018/05/21 (Mon) 22:18 | のんのん | 編集 | 返信

テヤン

Re: 遅ればせながら…

のんのんさんへ


初めまして。
私の書かれたお話を全部読んで下さったのですね。
ありがとうございましたm(__)m

> 2015年の年明けとともに善徳女王を見始めて、一ヶ月後には最終回を見て廃人になったというブームに乗り遅れた善徳女王マニアです。

偶々『善徳女王』に出逢ったのが遅かっただけで…
乗り遅れた訳じゃないと思いますよ~(笑)


> テヤンさんの描く幸せなトンマンとピダムに癒されてたり、ドラマに沿ったSSを読んで「そうそう!私もそう言う気持ち(解釈)なのっ!」とスッキリしたり… とにかく夢中でテヤンさんの世界を楽しませて頂きました。

そう言って頂けてとても嬉しいです(*^^*)
二次創作…何となく避けてらっしゃったとか。私も最初はそうでした(^^ゞ
そうだったのに、二次を読み始めたら、毎晩通うほどに熱中してしまい…
そして読み手から何時しか書き手の一人になってしまいました。
当時は多くの方が二次を書いてました。
ですが皆辞めてしまわれて…今残ってるのは私だけになってしまいました(T_T)
そんな絶滅危惧種的な善徳二次blogにようこそお出で下さいました。
基本的に私が書くトンピはハッピーエンドです。
ドラマ版のトンピの最後がね。
見ていてとても辛かったので、せめて二次では幸せになって欲しいと言う想いを込めて書いています。


> 私もテヤンさんと同じく司量部令ピダムのクールで寂しげな彼が大好物なので、毎話ドキドキですよ。

ミシルの乱後ですよね?
その後のドラマ、賛否両論ありますが、私、のんのんさんと同じく司量部令ピダムが大好物なので(笑)
もしミシルの乱でドラマが終わっていたら、ここまでハマらなかったと思います。


> トンマンのピダムへの甘え方が可愛くて、「あー、昔私もこうすりゃ良かったのか!」なんてアホなこと考えちゃったりして(^^)

これから甘えて下さいなー(笑)

トンマンは強い女性ですが…
そんな彼女も心が揺れる時があります。
人は誰しも一人では生きていけない。
時に誰かに甘えたくなる。
強い女性に甘えられた男性も満更嫌な気持ちにはならないのではないかと思います。

当方のピダムはドラマ版の彼よりも少しばかり大人な設定です。
『俺にはいつでも甘えて下さい』
そんなことをさらっと言えるくらいの…。

歴史上のピダムもきっと頼れる男だったのだと思います。
だからトンマンの次の権力者にしてみればジャマな存在だったのでしょう。
ピダムの乱、捏造説。
私はそれを信じる一人でもあります(^^ゞ
あら、ちょっと話が要らぬ方向に反れちゃいました(^^ゞ


> 今だに2ちゃんねるでもカキコミが続くという不思議ドラマの善徳女王
2次創作のまだまだ需要あります!

あら、そうなんですか(*゜Q゜*)
全く知りませんでした。
2次も需要があるんですね~
昔のようにガツガツとは行きませんが…
ガラパゴス諸島からピダムに愛を叫び続けたいと思いま~す(笑)


> まだ終わっていない話の続きがとっても気になりますので、テヤンさん楽しみにしてますよー!
長文失礼いたしましたm(_ _)m

はい、完結していない話…幾つかありますね~\(゜ロ\)(/ロ゜)/
こちらも少しずつ書いてはいます。
納得するものが書けたら、blogにアップする予定でいます。
気長にお待ち下さいね~(*^^*)


2018/05/23 (Wed) 15:54 | テヤン | 編集 | 返信

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